昭和逍遥 『紫煙と文士たち』林忠彦 写真展、そして、『ルパン』
わきまえるべき分というものがある。
年齢を重ねても、ふところが少々あたたかくとも、
扉を押せない場所が私にはいくつもある。
戦後の無頼派文士たちが夜な夜なつどったという
銀座『ルパン』もそのひとつ。
太宰の有名な写真を渋谷で見た後、銀座で一杯?という
ありがたきお誘いを受ける。
江戸逍遥に味をしめた、
都内文芸吟遊第二弾。
『ルパン』の重厚な扉。
これを押し開く日がくるなんて!
こんな場所が実にしっくり絵になる
友人のエスコートだったおかげで、
老バーテンダーと和やかに談話。
写真展で知ったのは、太宰の有名な一枚は、
そのときに残っていたたった1回分のマグネシウム(フラッシュ)を
炊いて撮ったもの。
あおりの角度なのは、林氏がカメラを引いて、後ろにある
洗面所の便座に腰掛けて撮ったから、と。
太宰の写真の右にちらりと写っているのは、
居合わせていた坂口安吾の背中、とバーテンダーに教えてもらう。
ちょうど友人が座った角の席。
夜の浅い時間にバンブーとモスコミュール。
友人はマティーニ。
戦後の混沌と
昭和の屈託に思いを馳せるには、
セピア色のあかりがふさわしい。
店を出てカキフライを求めて、三州屋へ。
有楽町からガード下沿いに新橋まで、そぞろ歩き。
グリーン車でもハイボール。
会話の断片メモ:
神保町『スイング』、カストリ、永井荷風、『ボビーに片思い』、川端康成、井上ひさし
三島由紀夫、デイビッド・ボウイ、『ジャッカルの日』、船旅、完璧な夏の一日、
内藤陳、小津の『晩秋』、セロニアス・モンク、林芙美子、植草甚一、北鎌倉、
リスボンの鰯、暗渠、路地裏、ろくでなし
by office_bluemoon
| 2012-03-17 14:18
| こころ、泡立つ(events)