Onomichi
海が見えた。海が見える。 五年振りに見る尾道の海はなつかしい、
汽車が尾道の海へさしかかると、煤けた小さい町の屋根が提灯のように、拡がって来る。
赤い千光寺の塔が見える。山は爽やかな若葉だ、緑色の海向うにドックの赤い船が、
帆柱を空に突きさしている。私は涙があふれていた。
『放浪記』 林 芙美子
by office_bluemoon
| 2015-12-30 09:34
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