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このところの読書(ブラッドベリとかヴォネガットとか)

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SF分野の作家が書いた本を、続けて読んだ。

読書会の課題図書となったレイ・ブラッドベリの『華氏451度』。
451℃とは、紙の書物が引火する温度で、
書物を焼く、つまり焚書のための特別部隊が人々を監視する近未来、という設定。

1950年代に書かれたこの作品を、
北の方角からミサイルが飛んでくるかもしれない日に、
アメリカ軍の管制塔の見える芝生の上で読んだ。
桜吹雪の下、夢中でページを繰った。

次に手を伸ばしたのは、カート・ヴォネガットの遺作となった
エッセイ集『国のない男』。没後10年経って、文庫版が出版された。

ヴォネガットはドイツ系アメリカ人。
第二次世界大戦中、アメリカ兵としてドイツ軍の捕虜になり、
捕虜としてドレスデンの大空襲で生き残る、という経験をする。
国家とは、人間とは、というテーマに対する
ヴォネガットの世界観はそのときに完成する。

「というわけで、わたしには国がない。よるべき人は図書館員、よるべき新聞は
シカゴの<イン・ズィース・タイムズ(In These Times)>くらいだ」(本文 p.111)


子ブッシュ政権下のアメリカを痛烈に批判するこの作品、
トランプ政権の今読んでも、まったく古くない。
いや、それどころか、日々起きている驚天動地に思える出来事が、
今始まった問題ではなかったことがわかる。
ユーモアの光るシンプルな言葉で、
人間の進化と創造性、宗教、文明の本質を
あざやかに、かろやかに、射抜いている。

ならば、なだれ込んでくる膨大な量の情報にも、
システムにも、できるだけ巻き込まれずに生きるには、どうしたらいいのか?


「しかしわたしにはいいおじもいた。(中略)おじさんの、ほかの人間に対する
いちばんの不満は、自分が幸せなのにそれがわかっていない連中が多すぎるということだった。
夏、わたしはおじといっしょにリンゴの木の下でレモネードを飲みながら、あれこれ
とりとめもないおしゃべりをした。ミツバチの羽音みたいな、のんびりとした
会話だ。そんなとき、おじさんは気持ちのいいおしゃべりを突然やめて、
大声でこう言った。『これが幸せでなきゃ、いったい何が幸せだっていうんだ』」(本文p.164)



見晴らしの良いレストランでこのくだりを私が読んだときに、
店に流れていたBGMの曲が、変わった。
あまりにも出来過ぎているので、顔を上げた。


ルイ・アームストロングの What a Wonderful World だった。
海がまぶしかった。








































































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# by office_bluemoon | 2017-04-23 07:49 | こんなもの、読んだ(本・雑誌)