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カテゴリ:Life is Cinema (映画)( 23 )

『カンパイ!世界が旅する日本酒』

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思いがけず仕事が早く終わり、そこから吹雪の中、
長靴で走って走ってミニシアターの最終回に滑り込んだ。

あとから考えると、このときにさんざん迷ったけれど、
間に合うギリギリでも行くことに決めた自分を褒めてあげたい。


日本酒になぜ、私はこんなにも惹かれるのだろう?

この疑問に光を当ててくれたのは
『南部美人』の五代目蔵元、『玉川』のイギリス人杜氏、
アメリカ人の the Sake Guyこと、<日本酒伝道師>の3人。

ほぼ貸し切りの最終回に、ひとりで観たのも正解。
311のくだりでは、鼻水と共に滂沱の涙。


この映画をきっかけに、はじかれたように、新しい出会いとご縁が始まった。
































***




















































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by office_bluemoon | 2016-11-24 10:03 | Life is Cinema (映画)

短編映画を11本

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作家の真価は短編小説にこそ、表れる。制約があるなかで、
説明すること、しないことについて、取捨選択を迫られるからだ。
映画だったら、どうなのか。

そのこたえを知りたくて、友人4人で短編映画を観にいく。
場所は横浜のブリリア・ショートショート・シアター

短編映画に特化したこのミニシアターの、システムがユニーク。
チケットを購入すると、60分のプログラムが見られる。1つのプログラムには、
15分~20分で完結する作品が3本か4本入っている。今回は、春先に開催されていた
『ショートショート・フィルムフェスティバル&アジア2015』受賞作特集AとBのほかに、
『フレンチロマンスショートフィルムプログラム』もあった。この日のプログラムを
3つとも選ぶと、短編映画を11本も観られる。

ほんの20分ごとに、まったく違う世界に問答無用で放り込まれる感覚が、
新鮮。プログラムごとの入れ替え制であるため、AとBの間と、
フレンチ特集が始まる前に席をいったん立つ。暗いシアターから明るいロビーに戻るたびに、
全身運動をした後のような心地よい疲労感で、ソファーにへたへたと座り込んだ。

20分というのは絶妙な時間。肌の合わない世界観だとしても、このくらいの時間ならば、
覚悟して身を浸していられる。反対に、ひとたび心掴まれると、20分以内で
語られたことの多さに驚く。

制約があり、抑制を利かせた中で語られるストーリーでは
「説明し過ぎない」技量が問われる。
エンディングの解釈が観るものの裁量に任されている作品は、
ディスカッションを生んでくれる。
映画閲覧後は、食事の席で賑やかに感想や意見を交換。ひとりで見ていたら
気づかなかったであろう視点や、解釈を教えられるのも、また愉しく。
1日にこれほど多くのドラマを他人と共有できるとは。長編では果たしえない、
貴重な映画鑑賞体験となった。

記憶のまだ新しいうちに走り書きメモ。カッコ内は製作国と上映時間。


<Short Shorts Film Festival & Asia 2015 受賞プログラムA>

『キミノモノ Cloudy Children』(イラン 18:04)
目に入るすべてのものを「自分のもの」だと言い張り、争う少年2人のある1日。
見るからに何にもない土地の、映像の色彩が美しい。小さい子の「泣き」と、
すべてにおいて支配的だった少年の気持ちの変化が、胸を打つ。

『蛍のいる風景 BRILLIANT DARKNESS: HOTARU IN THE NIGHT』(アメリカ 12:03)
蛍を語ることで、浮き彫りになる夜の暗さ。あの幽玄の世界を日米の蛍学者が
交互に語る。つい先月まで森や田畑に分け入って蛍を追っていた
個人的体験と重なり、映像美と共感しやすかった。「ほたる」とはもともと、
「星」の光が「垂れて」見えるほど空高く舞っていたから、「ほたる」と
名付けられたのだそう。

『ベンディート・マシン V - 引金を引け!Bendito Machine V - Pull the Trigger』(スペイン 11:54)
紛争に巻き込まれてしまった異星人を定点で観察し続けた作品。せりふのない
アニメーション。なのに、11作品の中で一、二を争うほど印象に残った作品。
アニメの底力を思い知る。この色使いのセンスは、日本の作品にはないのでは。

『しおり SHIORI』(日本 09:59)
事故で記憶をなくした彼のために、しおりをはさんだ文庫本を手渡し続ける、彼女。
テンポのよい展開にコメディーだと思い込んで観ていると、
最後に背負い投げを食らう。その不意打ちにまんまとやられ、鑑賞後仲間と
語り合うまで私はオチに気づけなかった。不覚。

<Short Shorts Film Festival & Asia 2015 受賞プログラムB>

『私の大好きな樹 Once Upon a Tree』(オランダ 14:40)
大好きなオークの木に寄り添う少女。木を中心になされる生態系の映像が美しい。
森林伐採に警鐘を鳴らす。エンディングはちょっと覚えていない。

『こころ、おどる -Kerama Blue-』(日本 19:58)
タイトルを観て、今回最も観たかった作品。慶良間島に降り立った
日本語の話せない日系米国人の妻と、フランス系米国人とおぼしき、
異文化に不寛容な夫。英語のまったく話せない島の青年とおばあ。
双方の会話がかみ合わないままドラマが進行していくのだが、
コメディーとアイロニーが絶妙な匙加減で混ざり合う。タイトルに恥じず
美しい慶良間の海。遠い昔に訪れた浜が登場し、身を乗り出して観たあっという間の20分。

『父親 Father』(チュニジア 18:00)
タクシードライバーのエディは、ひょんな親切心から産気づいた妊婦を
病院に送り届ける。それをきっかけにほころびを見せはじめる、人生。過去。
後味の悪いハプニングが重なっていくのだが、不条理の中からエディが決意したことを
最後に知らされたときに、タイトルの意味がずしん、と胸に響く。色調も美しかった。


<フレンチロマンスショートフィルムプログラム>


『ムーンライトセレナーデ Moonlight Serenade』(9:25)
10分足らずの間に交錯する、あまりにも多くの悲喜こもごも、そしてアバンチュール。
鑑賞後、友人が「すべてのことに自分の欲望が優先しているところが
フランスらしい」と言ってのけた。フランス映画をそれほど観たわけでもない私が言うのもなんだが、
まったくもって同意。ラストシーンでクローズアップされた
二人の微妙な表情の変化には、どんなにことばを尽くしても
表現できないことがこめられている。あのシーンは何秒間あったのだろう。これぞ、映画の真骨頂。

『虹のふもとで Follow the Rainbow』(5:10)
モノトーンのパリに、虹がかかる。その虹のふもとに、愛しいいあの人がいる。
大人の恋愛絵本のように、美しい映像。残念ながら、オチを覚えていない。。

『僕は鉛筆削り屋 I'm a Sharpener』(16:17)
「鉛筆削り屋」という商売がある、という前提がまず、シュールで、阿部公房や
ポール・オースター的。風貌からして鉛筆っぽい(!)青年が、きっちりと
スーツを着こなして、日々、カリカリと鉛筆を削る。クライアントの筆跡から
そのパーソナリティや気持ちに応じる削り味を探り当てるのが、彼の仕事。
映像の色調も、カメラワークも、音楽も秀逸。

『さよなら、メランコリー Bye Bye Melancholy』(22:05)
雑貨屋ではたらく二人の男女と、救急車を運転する女。パリ祭の日に織り成される、
三人の男女のドラマ。夜空に上がる花火と、取り返しのつかない悲しみの深さの
コントラスト。悲しみによって悲しみが癒される。そんなことが、人生には確かにある。
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by office_bluemoon | 2015-07-17 11:29 | Life is Cinema (映画)

映画「利休にたずねよ」 

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「利休にたずねよ」。
三年ほど前に原作を読んでから、映画化を待ちわびていた。

公開日当日、静かに観たくて深夜の回を待って鑑賞。

海老蔵の目ぢから、にはもはや驚かない。
すごみを利かせた目ぢからではなく、むしろ伏せがちな目、座り姿、所作、と
深く吐く息のような、ゆるやかな「静」に魅せられた2時間。
木下藤吉郎、羽柴秀吉、豊臣秀吉、を演じ分けた大森南朋のダイナミックな下卑っぷりが、
利休の「静」と好対照を成す。
頂点に上り詰めれば詰めるほど、絢爛なしつらえをすればするほど、
卑しさ、乏しさが増幅し、毛穴から立ちのぼってくる。
それがスクリーンに充満し、息苦しくなる。

原作の山本兼一の絢爛たる文体を、映画で再現するのはそもそも、難しい。
その側面をさしひいても、映像化に挑戦したたくらみ、解釈は成功したと言って良い。

国宝級の茶器が、作品中、ふんだんに登場する。
きらびやかで、浮き足立って、気ぜわしい季節だからこそ光る、抑制とミニマリズムの極致。
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by office_bluemoon | 2013-12-10 14:41 | Life is Cinema (映画)

『スカイフォール』 007

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六代目ジェームス・ボンド、ダニエル・クレイグの魅力、
これまで私にはよくわからなかったのだけれど、
悪役がハビエル・バルデム、と聞いて、いそいそと初日に映画館へ。



映像が美しかった。
どんな怖い殺戮・チェースシーンでも画面から目をそらすことができなかっ た。
圧巻だったのは、上海のビルのネオンを使ったブルーグレーと黒基調のシーン。



ところで、どういうわけかわからないのだけれど、
「オフィスのガラス越しに見える追っ手を、ゴムの木の鉢植えの影の床に伏せ て
息を殺してやりすごす」、とか「仄暗い地下道の窪みに潜んでいるかもしれな い
殺人鬼だか魔物だか吸血鬼を振り払いながら、全速力で走って逃げる」、とか、
子供の頃からなぜか、手に汗握る「追われる」夢を実によく見てうなされる。

以降、我が人生の「追われる」悪夢は
この上海の高層ビル・シーンがベースになりそうなくらい、印象的だった。



お目当てのハビエル・バルデムは、やはり芸達者。

金髪と、ミニマムに抑えられた英語のスペイン語アクセントとで
異形性を際立たせ、得体の知れない狂気を極限まで追求した。
のちに妻となるペネロペ・クルズと共演した
『それでも恋するバルセロナ』のラテン伊達男も演じられるのを知らなかったら、
老練の怪優にしか見えない(まだ四十代前半!)。

小顔でコンパクトな作りのダニエル・クレイグの
シャープな動きを引き立たせ、ハビエルはこのシリーズの悪役が担うべき
ミッションを見事にまっとうした。
今回の悪役、はまりすぎてしまったけれど、
七年前にはこともあろうにボンド役のオファーがあったほど、
確かな幅広い演技のできる役者であることは、特筆しておきたい。
オファーを断ったのは、当時映画『ノーカントリー』にかかっていたからで、
結局この作品で彼はアカデミー助演賞を受賞している。



長らく解せなかったダニエル・クレイグ・ボンドの魔法が
ようやく私にもかか り、
(スーツのたたずまい、歩き方が特にすばらしい!)、
最後の格闘の頃には、どちらを応援してよいか困った。
007ブランドの底力を発揮した
シリーズ50周年、の名に 恥じない記念作品だと思った。

そういえばやはり幼い頃のこと。
TV洋画劇場でこのシリーズが放映されても、
ボンドガールが登場すると、「もう寝なさい」と、問答無用で
子供部屋に追いやられた。
私が観たかったのはボンドガールのお色気シーンなんかじゃなくて、
仕掛けのあるペンや靴、アタッシュケースの中身だったのだけれど、
説明するすべもなかった。
ちゃんと頭から通しで知らない作品がたくさんある。

今は、心置きなく観られるのだもの。
もう一度初代ボンドから、振り返りたくなった。
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by office_bluemoon | 2012-12-03 07:42 | Life is Cinema (映画)

『テルマエ・ロマエ』

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テルマエ・ロマエとは、
ラテン語で「ローマの浴場」の意味。

お風呂好き、イタリア好き、
濃い顔好き、昭和好き、で
封切り前から楽しみにしていた。

古代ローマのテルマエ(浴場)設計士が
現代の日本にタイムスリップをしたら、という
いわば荒唐無稽なタイムトラベルもの。

古代ローマ人を演じきった
阿部 寛、市村 正親、北村 一輝、はまり役。
阿部 寛は二枚目路線からの転向が奏功し
快進撃が続く。
上戸 彩、可憐。

『ただ、そこにいるだけでおかしい』人、場面が満載。
人のいうことを聞くはずもない
集団行動などもってのほか、の
イタリア人エキストラたちが、
かくもばかばかしい役どころを
もじどおり裸で体当たりで演じている。
ヌケ感そのまま、の日本のおじいちゃんたちの怪演。
いずれも、せりふがなくても絶妙に滑稽。

原作は、イタリア人の夫を持ち、シカゴで創作活動を続ける
ヤマザキ マリの漫画。
銭湯といえば、タイルの富士山、ケロシンの桶、体重計、マッサージチェア、
瓶入りフルーツ牛乳。
家庭用お風呂には、シャンプーハット、お風呂蓋。
この日常風景は当たり前などではない!
それに気づけるのは、
外から日本を眺める客観性があったからこそ。


抱腹絶倒しながら、少しだけ泣きたくて
夜のシアターへ。
最近気に入っている日常からの逃避。

封切日初日。
23時過ぎ始まりのレイトショーに
わざわざ観に来る人々(自分もそうだけれど)を観察。
ちょっと荒涼としたエドワード・ホッパー的風景と
人情喜劇との落差に
コスモポリタンのエアポケットを見た。



映画『テルマエ・ロマエ』 
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by office_bluemoon | 2012-04-29 13:16 | Life is Cinema (映画)

『Straight No Chaser』

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ゆっくり映画を観るのも
お預けにしていた。
タイトルに惹かれてCDをレンタルしたつもりが、
届いたのはDVDだった。
そんな時間ない、と数日ほうっていたのだけれど、
ふと深夜に再生ボタンを押した。

タイトルのカットと音が始まった30秒くらいのところで
鳥肌がたって、一時停止にした。
誤発注は神の采配かもしれない、と思った。

これはタイトルにあやかるしかないでしょう、と、
ウイスキーをストレートで2cmぐらいショットグラスに。
(水で割るなんて、そんな、せっしょうな)
ウイスキーの刺激が舌から全身に広がっていくのが
わかるほど、寒い夜。
静粛な時間。
ひとりグラス片手に、
脳の奥までしびれるような音の恍惚。

セロニアス・モンクの生前のライブ演奏と
インタビューを編集したドキュメンタリー。
クリント・イーストウッドが監督作品であることも
知らなかった。

モンクの演奏と奇行の映像が織り交ぜられた編集。
ほんとうに、いつもおかしな帽子をかぶっているし、
歩き方はあぶなっかしいし、ろれつがまわっていない。
音でしか知らなかった奔放な演奏を、
映像で観るのもまた格別。
けれんみもなく、誠実な記録だと思った。
カウント・ベーシー、コルトレーン、トミー・フラナガンらと
共に生きた時代を、演奏とともに紹介。
映画『コットン・クラブ』のサイド・ストーリーのように
有名クラブがいくつも登場。
息子や、ロード・マネージャーの証言。
ビーバップの成り立ちなど、
系譜が興味深く、終始身を乗り出して鑑賞。
至福の時間過ぎて、途中何度もまどろんでしまい、
たった80分の映画を数日に分けて観終えた。

手元に置いておくべき映画かもしれない。


(2012-C1-0303 )



"Blue Monk"





"Just a Gigolo"




















































セロニアス・モンク ストレート・ノー・チェイサー [DVD]

ワーナー・ホーム・ビデオ

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by office_bluemoon | 2012-03-04 11:35 | Life is Cinema (映画)

『ミツバチの羽音と地球の回転』@神奈川市立大学


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「パソコンもおぼつかなかった」という友人の
お義母さまが立ち上がり、
友人夫婦が熱心に運営に携わった
自主上映会に。


美しい瀬戸内海で進められる原子力発電所の建設計画。
島の暮らしをまもるために立ち上がる住民。
石油依存社会に向けて国ぐるみで取り組むスウェーデン。

2009年の作品。

「私たちが海を壊すことなんて絶対にありません」

311後に観ると、
この映画の中で
国と電力会社のなすことすべてが反証になる。


総意がかならずしも国を動かしていないのならばなおさら、
現実を知り、自分のあたまで考えることが先決。



『ミツバチの羽音と地球の回転』 







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キャンパスの並木道。
やはり蝉の声が少ないように思えて。


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大教室、っていいな。居眠りしていた思い出ばかりだけれど。
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by office_bluemoon | 2011-07-21 10:44 | Life is Cinema (映画)

Glee / Don’t Stop Believing

珍しく観ている海外シリーズドラマ"Glee"

(Wikipedia -

ダサイ、地味、イケてない、の代名詞であるらしい
グリー(合唱)クラブの青春を描いた
ミュージカル仕立ての一話完結コメディ。
挿入歌がQueen、Journey、REOスピードワゴン、など
全曲が80年代、90年代洋楽ポップスのカバーで
何が飛び出すのかが毎回楽しみ。

そういえばグリークラブに明け暮れていた
わが弟。
最初は暗転のときの大道具運び係(せっかく観に行ってあげたのに
暗闇で机を運んでいるだけだった)の下積みを経て、
卒業する頃には
『レ・ミゼラブル』や
『屋根の上のバイオリン弾き』の主役を演じていた
ハイスクールライフは宝物なのだろうなぁ、
とうらやましくなる。

このドラマの高校生キャストの
歌唱力、表現力、ダンス力には度肝を抜かれる。
全曲カバーとはいえ、カラオケでなぞっているわけではなく、
自分のものとして堂々と歌いこなしている。
この表現力。生命力。躍動感。

テーマ曲のひとつ、Journeyの”Don’t Stop Believing”。

Glee版:




オリジナルのJourney、Steve Perry 版:



Journeyといえば、高校生の頃、男子校の
学園祭ステージで聞いた”Open Arms”。

そもそも学園祭というものにはあまりいい思い出がないけれど
これだけは、いまだに忘れられない。
ヴォーカルの子の名前ももう覚えていなくて、
別に、私に捧げてくれたわけではないけれど、
あの熱唱する場面は目に焼き付いている。

魂震えた時間は決して、色褪せない。
















































glee/グリー DVDコレクターズBOX

20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン

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by office_bluemoon | 2011-05-14 00:26 | Life is Cinema (映画)

『アメリカ、家族のいる風景』

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エドワード・ホッパーの画が好きだ。
人気(ひとけ)のないストリート。
素っ気ないのか人情味があるのか
入ってみないとわからないようなダイナー。
ぽつねん、と佇む人。

ヴィム・ヴェンダーズとサム・シェパードがその静止画に
人物を配置して、映画にしてしまった!
そう思っていたら、英語版のジャケットは
まさにそのホッパーの画*だった。
ホッパーの画にインスパイアされて作られたのだそうだ。

まず、余白こそが饒舌。
空間のバランスが絶妙。
中でも、サム・シェパードが
路上に捨てられた花柄の長椅子に
日が暮れても座り続けるカットは秀逸。
あの数分間だけでショートフィルムにできるほどだ。

色彩にも特色がある。
空と赤土の色をベースに、差し込まれる色は、
自然からのそれよりも、
ブリキやペンキ、プラスチックが朽ちていく途中の
中間色。
風化していくしかない、滅びの美学。
アメリカ中西部の風景。

そして、家族のきずな。
茫漠とした風景の中だからこそ、
よるべなく、脆く、温かい。

落ちぶれた西部劇スターを演じる、サム・シェパード。
ジェシカ・ラングは、片田舎のダイナーのウエイトレス。
皺の刻まれたサムとジェシカの顔を
感興を持ってしみじみと眺めてしまう。

サム・シェパードとヴィム・ヴェンダーズのコンビが
織りなした『パリ・テキサス』は、もう
30年近い昔のこと。

アメリカがただただ光り輝いて見えた、
1980年代。
未来は右肩上がり以外ないと信じこんでいた。

だから、あの『パリ・テキサス』に漂う
無常感は、
今考えると当時のわたしには
未だ味わったことのない感傷、
憧憬でしかなかった。

大人になったらできること、出会うことへの
想像の余地が
過去への懐古よりも多いのが
若さの特権だった。


あの頃から30年近くが経った。
アメリカも、わたしの住む世界も、わたしも
サム・シェパードもジェシカ・ラングも
歳を取った、という事実に
静かに身を浸していった。

黄昏を静かに見送るのは
決して酷いことではない。
むしろ、
喪失の痛みを知るからこそ
甘やかで美しいことを認めざるを得ない。





*
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原題: "Don't Come Knocking" (ノックしにこないで)


























































アメリカ、家族のいる風景 [DVD]

TCエンタテインメント

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(2011-C12-0424)
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by office_bluemoon | 2011-04-25 09:38 | Life is Cinema (映画)

『NINE』

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ブロードウェイ・ミュージカルの映画化。
そもそもフェリーニの『9 1/2』のリメイク、ということも
知らなかった。それでも、イタリア語訛りの英語が
耳に心地よく(なぜだかラテン語圏訛りの英語に惹かれる)、
なんだろう?と出だしからぐっと惹きこまれた。

年端のいかないひよっこたちを束にした、のではなくて
こんなに豪華な大物女優をこんなに惜しげなく
起用できてしまうことに、ただ、ただ、驚愕。
これを見ているだけで、飽くことはない。
さながら、視覚の満漢全席。




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やはりペネロペ・クルズが登場すると画面から目が離せない。
存在感ではソフィア・ローレンが圧巻だけれど、
ペネロペの美しさとプッツンさかげんも負けていない。


なんでこのしょうもない男に?と
たびたびつぶやきたくなる主人公を演じた俳優が
ダニエル・デイ=ルイスであったことを
最後の最後に知る。
一分の隙もないいい男、というより
すごく気になる男、を好演していた。

正面からのショットよりも
憂いを帯びた横顔の見せ方はさすがだし、
コートの襟の立て方、着こなしは
やはりヨーロッパの俳優、と感心する。
男のダンディズムやエレガンスは顔の造作よりも
佇まいや物腰に醸し出るのだと思う。

"Take off your clothes."という冒頭の台詞が印象的だった
『存在の耐えられない軽さ』で見せた線の細さはもうないけれど、
あのときの外科医の危うさ、は健在だった。

主題歌を始め、音楽もどれもいい。
ダンスの巧みさにかけては、もう、言葉もない。
現実から離れた幻惑感を味わいたいのなら、
超絢爛豪華な万華鏡のような、
虚構に徹したこんなミュージカル映画が
一番だと思う。


最後に、
「世界は男と女と愛でできている」というコピーは、絶妙。

「おだまり!あたしゃあんたに惚れたのよ」、なんてタンカを切りそうな
いなせで百花繚乱な
この映画のノリとエッセンスが過不足なく凝縮されている。































(2011-C10-0412)




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by office_bluemoon | 2011-04-24 09:39 | Life is Cinema (映画)