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カテゴリ:Book club 議事録( 19 )

Book Club (@都内) 『予告された殺人の記録』 ガルシア・マルケス

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友人の招きで、新しい読書会にお邪魔する。
ディスカッションは日本語。

ガルシア・マルケスの『予告された殺人の記録』を数十年ぶりに再読。
この作品について十数人で、1時間語り合う。
幼い頃には読み取れなかったマルケスの魅力を再確認。
ちゃらんぽらん、ともいえる、人間の性。
なにげないことが重なっていくうちに、人生の歯車がぎしぎしノイズを立てながら
どんどん悲劇へと向かっていくのをとめられない無常。
そのノイズはラテン文学らしく、ときに、くだらなく、ときにせんなく、ときに愉快。
むごい悲劇を描いているのに、楽天的な、人間礼賛をさらりとやってのけている。
いわゆる情痴沙汰を、ジャーナリスティックな時系列で
カットグラスのようなキレある切り口で構成できる手腕は見事。
やっぱり、マルケスはすごい。大好き。
不在に胸が痛む。

ほかに、ここ最近読んだ本の所感についてひとりずつ語るプレゼンが3時間。
自己紹介代わりに持参したのは、谷崎潤一郎の短編集、『美食倶楽部』。

マルケスも、谷崎も、
語り過ぎずに読者をその世界に引きずり込む熟達者。
もうひとつ、読者の五感を総動員させるセンシュアルな記述が得意。
これを下品にしないところが、両作家の知性と技量。
「匂い」のマルケス。
谷崎は「匂い」のほかに、「色」と「影」、「湿気」。

時間制限のある中、仕切りがすばらしく、
そのうえお仕事柄プレゼン上手な参加者ばかりで、4時間という長さを感じさせなかった。
読書範囲も多岐にわたり、なみなみならぬ刺激を受ける。

初対面の、さまざまなバックグラウンドの人が、本好きという共通項だけで
熱く語り合った。
斜に構えたところが一切なくて、すがすがしかった。

本来「静」であるはずの、読書といういとなみ。
愛とパッションみなぎる読書ライブにひさしぶりに出会え、上気して帰宅。




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『予告された殺人の記録』
ガルシア・マルケス


推薦されて読みたくなった本(備忘録):

『百年の孤独』(私淑する読書家が文学の金字塔、とまで。以前読んだけれど内容を忘れている。読みたい。)
『タモリ論』
『代替医療のトリック』(このところかぶれているサイモン・シンの著作でこれだけ読みそびれていた)
『11/22/63』 (食わず嫌いだった、スティーブン・キング。上巻だけで、二段組、電話帳の厚さ、の上下巻。JFKをめぐる、タイムトリップもの、と。この読書体験を共有できるのは、面白そう)
『岳飛伝』(北方謙三も、読みそびれている作家)
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by office_bluemoon | 2014-05-28 09:30 | Book club 議事録

Book Circle 議事録  The God of Small Things  by Arudanti Roi

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2013年最初のBook Club。
またインドの作家に。
Arudanti Roi の The God of Small Things

場所:
Steve家。ドライ(アルコール抜き)のポトラックで。コーヒーとブランチメニュー。

出席者:
Steve   (司会)
Alex
Michele
Reina 

インドの比較的裕福な家庭に生まれた双生児を取り巻く家族の物語。
因習や、伝統など、逃れようのない運命の中で、
満たされない者、失われていくものが次々に登場する。
子供の目を通して物語が進行する部分があり、途中、韻遊びや、
アナグラム(アルファベットの入れ替え)、大文字を多用するなど
ことばの遊びが文中に盛り込まれた独特の手法。
読み進めていくうちに、やがて読者もこの文体になじんでいく。

時系列に物語が進行しない。
重大なことは直接的に記述するよりも、仄めかす、気配や予感に満ちた文体。
その不吉さ、曖昧さゆえに、ときに物語についていけなくなる、という発言が。
何か避けられない、悪いことが起こる予兆が、不安な気持ちを起こさせるため、
主人公に感情移入しないように読んだ、という意見も。

タイトルの、The God of Small Thingsは、大いなる存在(=運命?天の采配?)の対極にある、
日々の小さな喜びや幸せに神が宿る意味ではないか、などとタイトルをめぐっても
さまざまな考察が巡らされた。

ここで、読書会のあり方、本の読み方について、意見が。
好みに合わないストーリーだとしても、主人公と距離を置いて客観的に読むのは
良くないのではないか、と。

私見になるが、ひとつの物語に対して、どういうスタンスで向き合うかは個人の自由でよいと思う。
それがdetachment(距離感を保つ・孤立)であれ、attachment(関与)であれ、
ひとは本を手に取った瞬間に、世界とつながることを選んでいるのだから。


メニュー:

焼きたてのしっとりレモン・スコーン/読書会の間に焼けたフランスパン二種/
前夜から秘伝の漬け汁に浸していたオレンジ・シナモン・ハニー・フレンチトースト/
スモークサーモン(テールの部分)/スモーク・ペッパー・タン/チーズ二種/オリーブ
コリアンダーたっぷりのグリーンサラダにフレンチドレッシング

コーヒー



みんな、おいしかった。
みんな、ありがとう!



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by office_bluemoon | 2013-02-09 17:40 | Book club 議事録

Book Club (日本文学) “The Samurai” by Shusaku Endo

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日本文学を洋書で紐解くブッククラブ、今年最後は、遠藤周作の『侍』。

徳川幕府の時代、藩主の手紙を持って慶長遣欧使節としてメキシコ・スペイン・ローマに渡った
スペイン人宣教師ルイス、伊達藩の侍支倉常長の一生をベースに書かれた歴史フィクション。
外交政策から一転、鎖国に転換した祖国、キリスト教世界の権威のはざまで揺れ動く、宗教観、
人間観を浮き彫りにする、遠藤文学の真骨頂が発揮された作品。

ディスカッションのハイライト:
-Scottの推薦。津波以前に仙台で、使節団の船のレプリカを見て、この史実に興味を持っていた、
とのこと。
-英訳もクオリティ高し、とPaulとScott。Van C. Gessel氏はDonald Keene氏と親交のある
日本文学研究者。
-ほぼ全員が、この作品を高く評価。導入部の純文学調が少々鼻についたものの、
ナレーターが切り替わるスピーディーなテンポに引き込まれた。
-史実を知っているScottや日本人メンバーたち、史実を知らないから結末も知らなかった
Paulも、一様にストーリー展開を楽しんだ。
-途中でトリックスター的に登場するメキシコに在留していた元キリシタンの日本人が
筆者遠藤の分身ではないか。
-みずからクリスチャンでありながら、「唯一神」よりも「汎神論」に移行した遠藤の苦悩が
小説に投影された作品。汎神論と仏教と神道に関する質問が寄せられたが、
仏教と神道の違いの深いところになるとうまく説明しきれない。
外国人からよく訪ねられる事柄だけに、要復習。
-日本人の持つあらゆる側面、辛抱強さ、恥の文化、外国好き、半面排他的で閉鎖的、利に聡い、
盲目的服従、などが、登場人物の性格でそれぞれデフォルメされて描かれている。
-貿易利権のためにキリスト教に転じるところなどは、現代日本の経済活動そのまま、かもしれない。
-悲惨な状況をことさらにドラマチックに書かず、抑制の効いたトーンで通した筆の達者さはさすが。
-映画化にも耐えられる構成。宣教師役には、メル・ギブソン、ゲイリー・オールドマンなど?

振り返ってみると、このクラブでは今年、私は五冊読めた(会発足の一冊目は未読。
ちょうど一年前、
オブザーバーとして参加。
"An Artist of Floating World" by Kazuo Ishiguro)。

日本人のほうが多いこちらのクラブでは英語で論理的に意見を述べる
練習をするよい機会になっている。
地元のブッククラブでは
English native のペースで話が進んでいるから、
なかなか発言に追いつけないのだけれど。
英語力プラス、何かを主張する強さ、スキルの問題。

来年からは、次回の課題本を毎回各自三冊提案することに。
次回は、”Naomi” by Jun’ichiro Tanizaki (『痴人の愛』谷崎 潤一郎)。
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by office_bluemoon | 2012-11-13 11:30 | Book club 議事録

Book club (@下北沢) In the Miso Soup by Ryu Murakami

地元のbook clubのほかにもうひとつ、都内のEnglish Pubで開かれる
日本文学を英語で読むbook clubにも所属していることは以前にも書いた。

中心になっているのは、このpubのオーナーであり、店の壁をすべて
蔵書で埋め尽くせるほどの愛書家、イギリス人のPaul。そして、カナダ人のScott。
あとは、翻訳を学ぶ仲間たち。この店の常客であるharumiさんを中心に、
いつも3-4名が集う。Non-English native speakersのわたしたちに、
PaulもScottも果てしなく優しくつきあってくれ、それでいて、ときに辛辣で、忌憚のない
作品の感想を聞かせてくれる。ふたりの愛あるがゆえの日本文化論はいつも新鮮。
また、日本語版(原書)をよむすべもないPaulから、英訳の質についても必ずひとこと
(例:『陳腐』、『平板』、『読ませる』など)あるのも、もうひとつの楽しみ。

ディスカッションは英語。読んでおくのは、和書・洋書、どちらでもよい。

備忘録として、過去読んだ作品。
Snow Country by Yasunari Kawabata(『雪国』 川端 康成)
Spring Snow by Yukio Mishima(『春の雪』 三島 由紀夫)
Face of Another by Kobo Abe (『他人の顔』 安部 公房)

そして、今回が、
In the Miso Soup by Ryu Murakami (『イン・ザ・ミソ・スープ』村上 龍)。

外国人相手に歌舞伎町の性産業めぐり、夜のツアーガイドをする主人公ケンジが、
年も押し迫ったある日遭遇した、ホラー・ファンタジー、とでもいおうか。

私見:
結論から言うと、これほど反発心を持って読んだ本はなかった。
それが、ラストまで残り十数ページのとあるくだりを読んで、突然すとん、と腑に落ちたことがあり、
作品への評価が逆転した。このことで、すべてのプロットの甘さが正当化されるわけではない。
しかしなるほど、村上氏がこの作品で言いたかったこと、思考停止した国民・国家への警鐘は、
今も一貫して彼のさまざまな活動の真髄になっている。
ある意味、このひとは筋が通っている、と感動すらおぼえた。

強いられる読書もたまには悪くない、と思った。

和書・洋書共に表紙がこわすぎて、カバーをかけたまま読んだ。リンクをこちらに。 
和書 
洋書 


次回は、Samurai by Shusaku Endo (『侍』 遠藤 周作)。
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by office_bluemoon | 2012-09-28 23:01 | Book club 議事録

Book Circle 議事録  Oryx and Crake  by Margaret Atwood

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夏休みあとのreunionになる、Book Club。
今回はカナダ出身のAlex と Robの推薦本。
Margaret AtwoodOryx and Crake

場所:
Rob邸のお庭。20キロ相当のリブをヒッコリーでスモークしながら。

出席者:
Alex   (司会)
Rob (BBQ King !) 
Michele
Steve
Reina 

まずAlexが、作者の出自について、その作品の評価と位置づけについて、概説。
Robはこの作家の作品は全作読んだ、ということで説明にも力が篭る。

それほど遠くない未来に警鐘を鳴らすサイエンス・フィクション。
ほぼ全員が夢中になり、三部作のうちの一作目である
本作品の続きが読みたくなる、と評した。

日本でも翻訳されているが、私にはまったく未知の作家。
カナダ出身の作家の作品を読むのは『赤毛のアン』のモンゴメリー以来、といったら、
とても驚かれ、笑われた。

私見:
自分ではなかなか手を出さない近未来小説。最初とまどったが、
慣れてからはストーリーをそこそこ楽しめた。ある程度の素養がないと
風刺や機微がわからない、知的大人のファンタジー、といったところ。
このファンタジーを、native speaker全員が高く評価したことに、
驚いた。
バックグラウンドも個性もバラエティに富む仲間たちと、
放埓な空想の世界をシェアしたことで、
永遠の少年・少女といったおももちの一面を、
垣間見られたことが嬉しい。

私の英語の語彙が限られていることもあって、架空の生き物 
(例:pig + racoon = pigoon)や、未来の造語が出てきても
それが実際にある言葉なのかどうかが判別できないし、
荒唐無稽な出来事も、果たして自分の読み違いなのでは
確信が持てないまま読み進めなければならないので、
平易な英語で書かれているにもかかわらず、とても苦労した。

ラストに向かってスピーディーに展開する部分以外の
プロットは、カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』や、
ジョージ・オーウェルの『1984』を彷彿とさせて
新味に欠ける気がした。また、児童売春のくだりは少々陳腐に思えた。

これに対してAlexから、抗弁が。Atwoodが得意とする恒常的なテーマ、
自然との共生・自然破壊への抗議・ハイテク世界の脆弱性と危機・
家族の断絶・第三世界からの搾取、フェミニズムへの傾倒、といった問題を
盛り込んだ結果そうなるのであって、
いたずらにセンセーショナルに物語を盛り上げるために
差し挟まれたプロットではなく必然なのだ、と説明を受けてやや、納得。

非English nativeの読者としてもう一点気になったのが、
カナダ人作家の作品ならではの描写があるか、という点。作中の家族の対話や、
社会背景が何点か挙げられたが、いずれもカナダに限定されない
ユニバーサルな問題、ということでCanadian identity的なものを特定できなかった。
Alexいわく、「そういうくだりがあったように思うんだけれど、今、出てこない」。
同じ英語圏であっても、カナダ文学界の特徴はなんだろう、という点が疑問として残った。

ここから派生し、アメリカを頂点とする西欧社会で、アメリカに対するカナダの位置づけ、
オーストラリアに対するニュージーランドとの関係性、など、比較文化論が展開され、
ブックメンバーではないアメリカ人のHughも議論に加わり大いに盛り上がった。

次回はMichele のセレクションの本に、ということで全員合意。
年内にもう一度ミーティングを開くために、中篇か短めの軽いものを、ということに。


Book Club閉会後は、Robの奥様HirokoやAlexの愛娘 Ninaちゃん、近所の人や親戚、
友人も加わってのいつものBBQパーティーに。
それでも、本好きが集まっているのでおのずとお気に入りの書籍、旅、好きな詩人、
アートの話で瞬く間に時が過ぎていく。
長らくの友人で冷静で寡黙な人物だと思っていたのに、
お酒が進むのも手伝って本のことになると熱く雄弁になるのも、楽しかった。

メインは前夜から漬け込み、朝9時からローストしていたリブステーキ。
それ以外のメニューは下記に。

メニュー:

ドライアプリコット or ドライイチジクの生ハムとモッツェレラ巻きブラックペッパー添え (Reina)

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セメント袋みたいに大きな紙袋いっぱいのナチョス + ホットサルサ(Steve)

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アーティーチョークのキャセロール パルメジャーノとマヨネーズオーブン焼き(Rob)

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チキンソーセージ (Rob)

グリーンサラダ(Hiroko)

サーモングリル オレンジ添え(Rob)

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家庭用(!)お化けマルガリータ・マシーン。通称『Robbie the Robo』(!!)。

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幼なじみが機内手荷物でカナダから運んできてくれた、というRobの宝物。
マルガリータ2種。プレーンと、ストロベリー大盛り。
カヴァが白2種類、ロゼ・スパークリング1種類。


日本は大好きだけれど一番恋しいのは食べ物、それも肉!と言い放つ
巨漢ぎみの外国人男性陣。常に紳士的に女性に肉を取り分けつつも、
実に嬉しそうに骨にくらいつき、肉汁で口のまわりをべたべたにして、
火の回りに何かと集まる。

SteveとRobがマルガリータを作り続ける。
自分のペースで飲んでいても、
「俺がせっかく作ったのに飲まないなんて!」と悲しそうな顔をする。
薦められるがままに、カップを重ね、夜が更けていった。

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by office_bluemoon | 2012-09-23 18:45 | Book club 議事録

Book Circle 議事録  1Q84  by Haruki Murakami

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我田引水(しめしめ)、で、「1Q84」が今回の課題本。
会場は、海前のレストラン。イタリアン。

出席者:
Robert 司会
Alex
Rob
Steve (高熱をおしての出席。ほんとうにいいやつだ!)
Reina  書記

司会のRobertが、
『考える人』村上春樹ロングインタビュー特別号をベースに、
著者と作品の背景、全3巻のなりたちについて、概説。
メールリストではいつも活発に意見を出してくれる Alexは
今回、オフライン初参加。
5ページにも渡るサマリーを手に、熱弁を振るい、
一同、聞き入る。
こんなに文学好きだとは、今まで知らなかった一面。

-死と再生がテーマ
- ユングの影響?(集合的無意識)
-ダンテの「神曲」をベースにしているのでは?
(死と再生、パラレルワールド、善なるものと悪、
「3」という数字の符牒…
例:全三巻、三ヶ月の出来事、三人単位で織り成す人間関係…)

AlexとRobは村上作品初挑戦。登場人物のライフスタイルや
映画や音楽などのモチーフが、日本独特のサブカルチャーよりも
西洋文化に根ざしたものが圧倒的に多いことから共感しやすく、
物語に入りやすかった、と評価。
いわく、「AKBとか出されてもさ、わかんないし」。

これを受けて、著者がかつてジャズバーを経営していて
特にクラッシック音楽やジャズに造詣が深いこと、
日本の作家よりも西洋の作家の影響を受けており、
デビュー当時は最初は英語で書いたものを日本語に訳して
短編にしていたこと、
既存の日本文学のスタイルを壊した、と評価と非難の両方を
受けていたことなどをReinaとRobertが解説。

全員が第1巻と第2巻の疾走感が第3巻になると失われ、
冗長と感じていた。
その書き方のスタンスの変化についても、
Robertが雑誌インタビューにあった作者の発言を
引用して説明。
Reinaは、この作品に作者が得意とする手法とモチーフがすべて
盛り込まれており、遺作になるのではないか心配、とも発言。
(例:パラレルワールド、非科学的なできごと、温室で待つ老婦人、
タマルなどの登場人物や設定は、
チャンドラーの『高い窓』へのオマージュ)

AlexとSteveは、前回課題本『シャンタラム』の作者のストーリーテリングの
手腕を高く評価していたが、『シャンタラム』が作者の実体験に
基づいた作品であることを考えると、100%フィクションである
『1Q84』の圧倒的なストーリーテリング力、"quite a pageturner"である点に感服する、と
コメント。全員、これに同意。

解散後数人は、海岸におりて散策。海開きしたばかりの海の家で
ビール、キューバリブレ、ハイボール。
夜更けまで話し込む。

次回幹事は、AlexとRob。カナダ出身の二人が強く推す、
Margaret Atwoodの作品に。
言われてみると、カナダ出身の作家、ってあまり知らない。

Oryx and Crake または
The Blind Assassin (2000年ブッカー賞受賞)のいずれか。
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by office_bluemoon | 2012-07-12 14:30 | Book club 議事録

Book club (@下北沢) Snow Country by Yasunari Kawabata

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ネイティブばかりの地元読書会で
もっと上手に英語で発言できるようになりたくて、
翻訳仲間たちと、日本文学を英語で読むアウェイの読書会に。
課題本は、川端康成の『雪国』。
英語で読むか、日本語で読むかは任意。
ディスカッションは英語。
自分も含めて、英語よりも日本語のほうが
得意な友人たちと行くことにしたので、
今回は地元の読書会仲間たちは遠慮して誘わず。

Paul
Scott
Harumi
Eriko
Akiko
Reina


何年ぶりかに読んだ最初の印象は、
難解で退屈で、やはり好きになれない。
でも、英日両方を二、三度読んで
緻密な象嵌細工のようなしかけをひもとくうちに、
なぜこの作品が世界的な評価を受けたかが少し理解できた。

下調べで見つけた
川端康成がノーベル文学賞を受賞したときのスピーチ、
美しい日本の私 ("Japan, the Beautiful and Myself")、に
『雪国』にも通底する自然観、無常観、うつろひに見出す美の真髄が
現れていて興味深かった。
(これを発言するための英語ボキャブラリーを用意することが勉強になった)

また、日本文学の陰影を翻訳でどれだけ再現できているのか、という点について
仲間たちとテキスト比較ができたのも思いがけない副産物。
名高いJapanolgist (日本通)、Seidenstickerによる翻訳は、
原文の妙味が活かされてないのでは?と日本語の読めないPaulとScottから
意見が。
日本語母国語メンバーから多かった意見は、
確かに、平板かもしれないが、
日本語版での疑問点は、むしろ英語を読むことで氷解する、と。
有名な冒頭の文章を和英で比較した。

PaulとScottが、日本文学・日本文化の造詣が深いことに
ずいぶんと助けられた。
いまさら青臭い近代日本文学を語り合うのも、
英語だと衒いが薄れて、ありがたい。


次回課題: Spring Snow by Yukio Mishima



読書会後、個人的に印象に残った会話。

「Paul、書く人になるために必要な資質、って何だと思う?」
「コミットメントだよ。いつか書く、って言っているだけではいつまでもだめなんだよ」
「Scottはどう?」
「何時間座っていてもへいっちゃらなおしり」

作家になろうと思ったことなんてない、って言っていたけれど、
こんな答えがすぐ出てくるってことは、二人とも嘘をついている、とみた。
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by office_bluemoon | 2012-04-10 21:02 | Book club 議事録

Book Circle 議事録  Shantaram  by Gregory David Roberts

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(いろいろな国のとりどりの装丁が集うのも、書籍フェチとしてはたまらない。今回は、
電子デバイスで、読みきった猛者も)


オーストラリアの脱獄犯が家族も友も国も捨て、
ボンベイにおりたち、スラムに住み、
カフェで仲間に出会い、
貧しい人々を無料で治療し、恋に落ち、ここでも投獄され、裏切りにあい、
ふたたびヘロインと阿片に溺れ、
友を亡くし、師に出会い、マフィアになり、闇外貨取引、マネーロンダリングや
パスポート偽造の技巧を覚え、
パキスタンに渡り、アフガニスタンで闘い、生き延び、果てに見出したものは。

これをどうやって、要約すればよいのか。
とにかく、現代のシンドバッド。
驚くべきことに、すべて著者の体験を元にした半自伝小説。
著者による特設サイトによると()、ボンベイ後の人生も、
フランクフルトでまた投獄され、ハーレー・ダビットソンの設計にかかわり、
今はスイスのプリンセスと結婚し、と小説以上に数奇。

<この項、office_bluemoonの私見>
無理やりひとつのキーワードに封じ込めるとしたら、
dichotomy、二項対立はあるのか、ということ。
善と悪、愛と赦し、聖と俗とを純然と、
明確に分けることができるのか、ということ。

象徴的だったエピソードをひとつ。
投獄されていた主人公が、獄中でネズミを可愛がり、心の支えにしていた。
手なづけられ、人を恐れなくなったネズミはやがて主人公の手からも
エサをついばむようになった。ある日、房を移るように言われた
主人公は、入れ替わりにその房に入ることになっている気が許せると思っていた
仲間の受刑者に、そのネズミの存在を教えた。
しばらくたって、その受刑者は笑いながら、小さな棒にはりつけにされ、死にかけている
ネズミを主人公に見せた。「いやぁ、しばりつけるときに暴れて、苦労したよ」と。
人間に近づいても大丈夫だ、ということを教えなければネズミは死なずに
すんだのに、と主人公は心から悔やむ。
そして、このことに思い至る。佳き理由ありき、で成したことが、
悪い結果になることがある。
「人は正しい理由から、間違ったことをする」



本日のメンバー(過去最多!):
Steve
Charlie
Robert
Forrest
Karin
Michelle
Reina

当日出席できなかったけれどウェブ上のディスカッション参加Alex
ほか、non-book club member が4人。

場所:
海のそばのインド料理レストラン

ディスカッションは活発すぎてサマリーはほとんど無理であるため、
会の進行のみの記録に。

ミーティング当日までに、メールリストで自由に問題提起。海外サイトの、
チェックシートなどを参照。

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今回、chairpersonのSteveが素晴らしかったのは、事前に提示された
質問をタイプアップして短冊状に切ったものをくじ引きさせ、
その質問を軸に討論を進めたこと(上の写真)。
チャイから始まったこの日のお料理(覚えているものだけ)

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サモサ
タンドール・ゴビ
チキンカレー
バターチキンカレー
マトンビリヤーニ
ナン

(写真、忘れそうになって食べかけでごめんなさい)

次回の課題本のアイデアを二点ほどだして、解散。
後日、メールで多数決をとって決めることに。
次回は、春休み?



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キッチンカウンターに天使が座っていた。本日のミス・笑顔。


























































Shantaram

Gregory David Roberts / Abacus

スコア:


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by office_bluemoon | 2012-01-22 22:51 | Book club 議事録

book club 視察 (@下北沢)

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翻訳仲間の兼ねてからの誘いで
イギリス人のPaulが主催する読書会に
オブザーバーとして出席。
通常は土曜日に開かれているセッションを
特別に水曜日にも、と調整してくれた。

英語で運営されているほかの読書会では、
どのようなスタイルで進行しているのかに
ずっと興味があった。

Paulはこのパブのあるじ。
まず、圧倒的な蔵書量に店に一歩入って、
声をあげた。
すべて洋書。

「これ、全部読んだの?」
「いや、お客さんが置いていってくれるんだよ」
「Paulは謙遜しているよ」、と横から
参加者のScottが茶々を入れる。



課題本は、Kazuo Ishiguroの
An Artist of the Floating World。 

ぜひ、読みたかったし、
意地を張ってないで、日本語版を読めば良かったんだけど、
いきがって買った原書を読了できないまま、席に着く。

日本人友人とPaul、Scottの会話をずっと聞いている。
書架は見掛け倒しでなく、Paulが実に桁外れの読書家で、
軸のある意見を持ちながら、他人の意見に対してオープンであることに
感嘆。やっぱりもうひとがんばりして、読んでおけばよかった、と後悔。
Scottも、会話が活性化するような質問を折々に挟む。
ファシリテーションがほんとうに真摯で上手だなぁ、と感心する。

黙っていては申し訳ないので、Kazuo Ishiguroのほかの作品に
共通して見られることへの私感をときおり、発言する。
あと、時代背景を確認するのに、i-padを取り出し検索、などで
お役に立てたくらい。ゴジラ映画が最初に世に出たのはいつか、とか。

日本人友人も、事前に自分の言いたいことをまとめていて、
丁寧に伝えようとしていた。彼女らしい。
ほんとうに準備周到なのだ。ふだんの授業でも質問が的確だし。
それを誠実に受け止めて、議論を運んでいる三人のやりとりに
とても好感が持てた。


議論が終わり、雑談の時間になり、
好きな作家や、作品論について1時間ほど四方山話を。
あぁ、ほんとうにわたしはまだまだなんだなぁ、と
そのまま座っていたソファに沈み込みそうに恥ずかしくなり、
(あらためて)知見の狭さを思い知る。
無知の知、といっても、知らないことには変わりはない。
これほど語れるだけ、まだまだ読めていないと思う。

いつもの読書会友人たちと嗜好が違うから、
私の好きな作品への批評も、新鮮。辛辣だとしても、
作品へのレスペクトと確たる根拠が挙げられているから、
頑なな判定をくだすわけではない
フェアな議論は気持ちがいい。

一点。翻訳の役割、について、
「ほんとうに忠実に訳せていると誰がわかるんだ?」という議論は
もっと続きを聞きたかったし、私見をもっと的確に説明できたら、と
悔いが残る。

「そんなに大変でわりがあわないなら、自分で小説を
書いた方がいいんじゃない?」という
Scottのことばも、胸にコトリ、と響く。

そう、確かに労多いのだ。
それでも、これだ、と思える訳語を見つけたとき(カチリ、とわかる)の
悦びといったら、
なにものにも替え難いことを
うまく伝えられず、歯痒かった。

途中、来店する本好きで英語ができるお客さんも
そばで私たちに耳を傾けている、オープンな空気感が
心地良く肌になじんだ。
去りがたくなる温かさがこの場にはあった。

本が好き、というだけで、
つながれることに満足しないで、そこから何を語れるか、が
大事、と痛感。

また、作品を本として世に送り出すということは、
こういった人々の批評に耐えるということ、とあらためて実感。




近々、ローカルの読書会にもフィードバック予定。
誘ってくれた、
やはり寝食忘れて本好き、翻訳好きの
友人に心から感謝。



p.s. 紫煙ゆらめくパブで、ギネスとハイネケンに挟まれながら
オレンジジュースのソーダ割りで通した自分をとても褒めてあげたい。
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by office_bluemoon | 2011-11-17 12:21 | Book club 議事録

Book Circle 議事録 Sunset Park  by Paul Auster

10月某日、ひさしぶりの読書クラブ。

メンバー:
Steve
Charlie
Robert
Reina

ほか、準備サポートに駆けつけた友人、同居パートナーたち。
さらに、常時近所の外人・日本人がアポなしで顔を出す
風通しのいいおうちが今日も会場。

最初に反省から。
読書クラブ、プラスα(お祝いごとが重なった)、の要素を
集まりに盛り込みすぎた。
何人か到着が遅れるメンバーを待っていたら、
料理を給仕するタイミングとディスカッションするタイミングが
重なってしまって、本の内容を掘り下げられなかった。

全員のコメントを正確に再現できないため、本稿はReina所感のみ。

(それくらい、料理がすばらしすぎた。
そのせいで、今後の参加希望者も増えたこともつけくわえておく)


***

課題本:Sunset Park by Paul Auster
(未訳作品につき、英語サイトのみ)

オースター得意の若き魂の彷徨。
大人が代表する欺瞞や邪なるものと対峙する幼さ、若さ、イノセンス。
気になるのは、またもや主人公が終始運命に受け身である点(禅の思想?)。
問題から逃げている、という印象からまぬがれられない。

でも、私はそれもありだと思う。
誰もが必ず、直面した問題に逃げずに取り組んでいるわけでも、
それを必ず解決してから死んでいくわけでもないのだから。
置かれた状況や問題の解決を先延ばしにして、
ガールフレンドや数少ない友人、読書に主人公が逃避しているようにみえるのを
責めることができない。
まさしく私もそうだから。

そうでもしなければ、むきだしの現実と生きるのが
残酷なときがある、と思うから。
だけど、喪失体験は人をまろやかにすると思うから。
だからこそ、友が、本が、お酒や映画や音楽、ことばたちが
人生を照らしてくれるのだと思うから。


脇役たる友人たちのキャラクターが多彩。
ただ、それをうまく個別に描き、活躍させ、
うまく互いに関わり合わせる前に、
物語が終わってしまったような印象。
彼の最高傑作だと思う、
Moon Palaceと鋳型はほぼ同じ。その素描、というか、
ラフな小品、というところか。


さて、お食事のメニュー。
秋だからフルーツをテーマにしよう、というお題がベース。
そこに、Reinaが(数日前に誕生日だった特権で)いばって、采配ふるって決めた、
ほとんどが、SteveのBest of Best レシピ。

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オリーブとドライトマト・松の実のピンチョス
アーテイーチョーク
ペッパーサラミとゴルゴンゾーラのハチミツ和え

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イチジクと生ハムとモッツェレッラのサラダ(Steveのシグネチェアたるサラダ)

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手打ちラビオリ。具は、パンチェッタ・チーズ数種類・乾燥イチジク

チキンファヒータ

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洋梨バローロ煮オレンジピール風味
デーツ(なつめやし)プディングカラメルソース和えとバニラアイスコーヒー


きっと、この週、日本一美味しい読書クラブが開かれたのは、このおうちだと思う。

***
次回の本、Steveの推薦を承認。なんと944ページ!
(『ってことは、100ページごとに区切っても9回集まってたらふく食べる理由が
できるわけだ!』とのたまったメンバーがいた)

全員nativeの中で、読むのだけでも、
追いつけるのかすごく心配。。。でも、こういう機会がなければ
900ページの洋書なんて、ぜったい読まない。
ありがたいこと。

Shataram by Gregory David Roberts
(未訳作品につき、英語サイトのみ)



さて、このときの読書クラブのもようがちらりと、
J-Wave毎週日曜日のロバート・ハリスさんの番組、
Vintage Garage (18時~19時)の18時半からの約5分間のコラム、
“Wildside”で紹介されるとか。10月23日(日)OA予定だそうです。


お時間が合うようでしたら、チェックしてみてください!




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Sunset Park

Paul Auster / Faber and Faber Ltd.

スコア:


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by office_bluemoon | 2011-10-21 09:10 | Book club 議事録