office bluemoon

<   2009年 12月 ( 30 )   > この月の画像一覧

once in a blue moon (2009年大晦日に)


ひと月のあいだに、満月が2回あることを、
blue moonと呼ぶのだそうです。
転じて、"once in a blue moon"は、
めったにないこと、を指すときに
使われる慣用句だとか。

さて。月の暦によると
2009年の最後の日から、2010年をまたいで、
満月を迎えるそうです。
正確には、元旦の明け方、4時13分頃に。
満月が去ったあとを追いかけるように、
2010年生まれたての朝陽が昇る、という
壮大な天空のキャスティングです。

年をまたぐ場合も、
blue moonと呼んでいいかは、
ちょっとわかりません。
でも、めったにないことには変わりありません。

華々しいスタート。
これが象徴するように、
2010年は、めったにまみえられない幸福なびっくり、が
たくさんある(おこす)年にしたいな、と
静かに心に誓っています。

***

さて、文章修行のために写真講座に通い始め、
ミニマムな表現を追及してみたくなって
誕生したブログ。
思想と理屈で世界をとらえるやり方だけではなく。
視覚と感性で現象をとらえる解釈を
新しく知ることができました。

生きているかなーとこっそり訪れてくださったり、
コメントやメールでメッセージを送ってくださった方々なしには、
ありえなかったご縁や奇跡に恵まれました。
今年出会えた
佳きひと、美しきものや風景たちには
ひとりの力では巡りあえなかったと思います。

部員がみんな帰ってしまった夕焼けのグラウンドで
不器用で、真正面にしか返せない愚直な
千本ノック、あるいは素振り練習に
つきあっていただいているようで、
申し訳ない気持ちと、感謝の気持ちでいっぱいです。

「抑制の利いた表現」に
こだわっていたものの、
もっと文章を書いてもいいのでは?という
友人の有難い励ましの声がずっと耳に残っていました。

すでにある外国語に寄り添う訓練は積んでいても、
よりかかるもののないところで
自分の声を挙げることには慣れていない。

何だったら、続けられるだろう。
ことばに責任と緊張感を持って、
それでいて客観性を失わずに書けるだろう。
年の後半、ずっと考えていました。

ぎりぎり大晦日になってしまいましたが、
ひとつ新たにブック・レビュー「本のこと、話そう」を
カテゴリ追加してみました。
誰かと共有したいほど素敵な本に出会えたら、
更新したいと思います。

このコラムを契機にまた何かが生まれ、
連鎖することを念じて、
握りしめていた手のひらを
虚空に向かっておっかなびっくり、開いてみます。


今年の尽きせぬ感謝と、
新しい年が恵み溢れるものであるよう、
願いをこめて。











office_bluemoon 




f0205860_2524723.jpg

[PR]
by office_bluemoon | 2009-12-31 11:50 | ごあいさつ

「作家の愛したホテル」 伊集院 静

 
 他愛もない夢がある。
 物書きとして旅をしてみたい。もう少し細かくいうと、
ビジネスやレジャー目的で選ぶときよりも背伸びしたホテルで。
てらいなく風雅に、少し気難しい顔をしながら、誰はばかることなく書き、
読み、思索するために長期逗留してみたい。だから作家とホテル、という
古典的だけれど、喚起力のあるこのタイトルの取り合わせに、まず惹かれた。

 伊集院氏は四十歳の後半から五十歳の後半まで、約十数年間、
毎年旅に出ていたという。この本は、多いときは一年の半分近くを海外で
費やしたこの時期の、大人の男の旅とホテルに関するエッセイ集だ。

 いつ立ち寄っても「元気でしたか」と喜んで迎えてくれるパリの定宿と
そこで働く人々。カジノで一文なしになり、何も考えられないほど
痺れきった身体をひたひたと包んで行く美しいノルマンジーの夜明け。
たった一枚の絵画に出会うためのスペイン紀行。バーに集う寡黙な
男たちの交流に嫉妬したくなるスコットランド。タイソンの負けっぷりを
見届けるためだけの、テネシーへの旅。悠久の時間と生命の根源を
むき出しで突きつけられるアフリカの大地。
 共に逍遥し、盃を重ねているような芳醇な時間に浸ることができる。

 伊集院氏の著作は、十数年前に文学賞を受賞した小説や軽いエッセイを
数冊読んだきりだった。文体が褒めそやされるよりも、その行状と風貌で
男も惚れてしまうような男、と評されていたのが印象に残っている。
 鼻っ柱ばかり強かった娘時代からある程度歳をとったせいだろうか。
男が惚れる男、という意味が今やっと得心したような気がした。

 「女、子供に何か語るものを、私は持ち合わせていないし、黙って
大人の男のすることを見ている、という気持ちがある」とうそぶく。
かと思うと、
「働く女たちを美しいと思う。それ以上に彼女たちに逞しさを感じる。
生きて行く上においては、女も男もかわりはない。ただ私たち大人の男が
懸命にするほどのことを女性がしている姿を見ていると、手を差し伸べたい
気持ちが湧く」、と優しいまなざしを向け、泊まる部屋にも生花を飾ることを
この上なく愛する一面を持つ。
 冷静に考えると身勝手このうえない。それなのに巻き込まれてもいいかな、と
思える小気味良いマチスモ(男くささ)、ダンディズムに陶酔した。
硬軟が綾を織りなす文章は、美しい音楽のように静と動の緩急が好ましい。

 ダンディズムとは何かを考えてみた。
 流行歌の歌詞は男が女を「おまえ」でも「あなた」でもなく「きみ」と呼ぶ、
ソフトでみんなに平等で、自由で優しい時代。そんな中、どんなに無頼に、
放埓に見えても、これだけはやらない、と自分を律するルールが、厳然とある
ふるまいだと思う。しなやかさが尊ばれる時代の中で、その無骨さがまた
素敵じゃないか。

 日常から離れた空間移動。旅。そこでは、普段当たり前だと思っている
観念や風景、情緒すら、時として根底から覆される。自分の弱さ、無知さ、
足りないものを日々問われる。新しく現れる事象にやわらかく接する姿勢が
養われていく。そういう環境に置かれて、これだけはやるまい、ここまでは
やらない、という規範を自覚しているから、危険から身を護れる。加えて、
旅を人生の滋養とできるのは、どこにいても野の花を愛で、夕陽にしばし
手を止める詩情があってこそ。
 そうでなければ、旅続きの人生は人をいたずらに磨耗させ続けていく。
伊集院氏は一種、タフで優しきサバイバーなのだと思う。

 そんな厳しい資質が問われることをわかっていてもなお、
物書きの旅への憧れは止みそうにない。窓の見える部屋の机に
本を積み上げ、眉根にしわを寄せてひとり原稿を書く、疲れたら蕭然と
カウンターでグラスを傾けて氷が軋む音に耳を澄ませる。その旅を
自分でするのが叶わなければ、ダンディズムを感じさせる吟遊詩人、
物書きたちを遠い目をして追いかけ続けるしかないのだろうか。
さぁ、どうする。


(2009-B110-1229)



















作家の愛したホテル

伊集院 静 / 日経BP社

スコア:


[PR]
by office_bluemoon | 2009-12-31 11:43 | こんなもの、読んだ(本・雑誌)

冬篭り


目に留めた一節が、
長いことか扱いかねていた想いを
過不足なくことばにしていてくれたり、
流麗とした表現にしているのを見つけたとき。

(目の前で爆ぜているかのような)炎ごしに
(ぼんやりと浮かび上がる)友たちが
「うん、そうだよね」と同調してくれたり、
「ここまでのやりかたで、だいじょうぶだよね」なんて
炎に手をかざしながら
語らっているように思えて。

茫漠とした空の下、風に吹かれて、という
夏の読書とはまた趣が、身体感覚が異なる。
ぬくぬくとした洞窟に護られているような
冬の読書の安寧、冬篭りの快楽。

疲れた目を休めようと、窓を開ける。
凍てついた冬の空さえ、
火照った頭に心地よく感じられて。
ココア、もう一杯だけ。
ついつい、のあと1章分だけ。





f0205860_11334221.jpg

[PR]
by office_bluemoon | 2009-12-29 09:23 | 迷路に遊ぶ(おもふこと)

ともしび


f0205860_1043763.jpg















煽り立てるような閃光ばかり
街にあふれていたから。

幽暗な灯に身を寄せて
真夜中にほうっと息を吐く。
[PR]
by office_bluemoon | 2009-12-27 10:47 | 迷路に遊ぶ(おもふこと)

異郷


f0205860_12365119.jpg















この路地に一歩入るだけで
迫りくる旅愁は何か。

漢字を使っている点だけ同じだが、
ほぼまったく、と言ってよいほど
表記に横文字がない。

理解されようとするよりまず、
どこにいても一徹にアイデンティティを
貫こうとする逞しさ。団結力。

この問答無用の気迫に負けて、
足を踏み入れた者はまたたくまに
異郷に紛れ込んでしまった
心もとなさを感じるのだと思う。
[PR]
by office_bluemoon | 2009-12-26 12:44 | 迷路に遊ぶ(おもふこと)

渇望


f0205860_1431260.jpg















心の底から手に入れたいものは、
この街のウインドウには並んでいない。
[PR]
by office_bluemoon | 2009-12-25 14:04 | 迷路に遊ぶ(おもふこと)

耳を澄ます


f0205860_7295514.jpg












そこには音楽も音も伴うはずはないのに。

夕陽が水平線に届いた瞬間に、
「じゅっ」って音がするんじゃないか
いつもつい耳を済ませてしまう。
[PR]
by office_bluemoon | 2009-12-24 07:31 | 迷路に遊ぶ(おもふこと)

やかた


f0205860_11115555.jpg

















堅牢で、過度な飾りがなくて
なんびとも
経年の変化をも包み込むおおらかさがあって。

その旧い建造物にはないのは
軽妙さだけ。

でもそれはきっと、音楽や絵画、家具、
調度品などが補ってくれるもの。
そういった要素が配合されてはじめて、
やかたの佇まいに
陰影やリズム、住まう人の個性が映える。


やかたのような
ありようっていいなぁ、と思う。
今、最もあらまほしきものは、
小気味良い軽妙さ、かな。
[PR]
by office_bluemoon | 2009-12-23 11:19 | 迷路に遊ぶ(おもふこと)

嗤う月


f0205860_6511841.jpg












やらかしてしまった
みじめな喜劇をおもいだして
オナカをかかえて、笑いころげてたら、
三日月のやつも身体震わせて
せせら嗤いやがってじっとしてないもんだから
カメラに収まりやしない。

昨日の夕焼けは、笑いすぎて咳き込んだ血へどと
不覚こぼれ落ちた不始末な涙の色。
[PR]
by office_bluemoon | 2009-12-22 06:58 | ぜんぶ月のしわざ

思索


f0205860_7153020.jpg











彩りあるものをすべて
そぎおとしたあとに残る、無骨なかたち。

ポプラがポプラであるための、
イチョウがイチョウらしくあるための
枝や幹のなりたちがくっきりと。
存在理由、思想体系を
静かに、でも厳然と提示している。

風景がことさらに哲学的にみえる
冬の始まり。
ひともついまた、かじかむ心震わせ、
もの思いに耽る。
[PR]
by office_bluemoon | 2009-12-21 07:20 | 迷路に遊ぶ(おもふこと)