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70年代本

『表参道のヤッコさん』 高橋 靖子 

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横須賀美術館の展示に行った興奮冷めやらぬ中、
70年代をリアルタイムで謳歌した友人に薦められて読んだ。

ヤッコちゃん、こと、高橋靖子さんは、スタイリストのさきがけ。
60年代の半ば、「スタイリスト」という職業で納税したときに、渋谷税務署職員に
「この職業で納税するのは、日本ではあなたがはじめてです。
これから続く人のためにしっかりがんばるように」と、励まされたのだという。

まだ何者でもないのだけれど、「私には何かある」、と信じて
夢中で駆け抜けた70年代。
表参道と明治通りの交差点近くに当時あった
(96年に解体。現・東急プラザ)、
セントラル・アパートから物語は始まった。

ここに登場するヨーガンレール、パレフランス、原宿プラザ、ヴィオロンは、
母に連れられて出かけるハレの立ち寄り先だった。
粋でお洒落であればこそ、のエスプリが店員や道を行きかう人にもにじみ出ていた。
幼いながらも緊張し、それでいて心躍る街が、表参道だった。

私でもわかる名前だけでも、山本寛斎、山口小夜子、伊丹十三、
YMO、ブライアン・イーノ、デヴィッド・ボウイ、矢沢永吉などなど。
キラ星のような人々に飾られた70年代グラフティ。

日本が今よりもシンプルで、イノセントで、疲れを知らず
未来がキラキラしているように思えた時代、と
くくってしまうのはあまりにも懐古主義なのだろうか。


『知らない本や本屋を捜したり読んだり』 植草 甚一 

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やはり70年代展で思い出して取り寄せた本。
そうそう、このとりとめのないJ・J 節。
そもそもこんな博覧強記の欧米通への憧れから、
すべてが始まったんだっけ。

だらだらと歩いて、書いて、読み散らかして、買い漁って、
映画やジャズにのめりこんで、
ときどき空を見上げる人になりたかった。
そのスピリットというか、モンスターというか、妖精というか、
茶目っ気たっぷりのゴブリンみたいなものは、
今も私の中でちゃんと呼吸をしている。

メッセージが瞬時に地球の裏側に届き、
注文したものが翌日届き、均一で安いものが店頭に並び、
まったく口をきかなくても買い物ができてしまう
効率至上の21世紀。
そんな世の中とまったく逆行しているけれど、
諸行無常の人生のいろどりは、(このブログの要諦でもある)一見無駄で
とりとめのない寄り道や有象無象(うぞうむぞう)の中にある。
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by office_bluemoon | 2013-03-29 08:42 | こんなもの、読んだ(本・雑誌)

the great tiramisu challenge


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誰が作ったティラミスが一番美味しいかを競う
来月予定されている The Great Tiramisu Challengeの練習をしたんだけれど、と
ティラミス2種の試食に呼ばれる。

作った人を目の前に、
甲乙つけがたいとは、こういうことをいう。

食べきれず持ち帰り、翌日も朝からティラミス。
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by office_bluemoon | 2013-03-29 07:54 | しみじみのごちそう

イタリア本続き

『イタリア人と日本人、どっちがバカ?』 ファブリツィオ・グラセッリ 

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政治や歴史的背景を知らないと理解できないことがある。
北と南の経済格差、EUの中で置かれた立場、今年の総選挙でなぜまた
汚点と疑惑だらけのベルルスコーニが出馬し、かつ、支持されたのか。
こうした疑問に、この一冊は手軽に答えてくれる。
ぎょっとするタイトルだが、内容ははるかに真面目。

著者は在日20年の建築家。ダンテ・アリギエーリ協会東京支部会長。
最終章の、日本とイタリアの未来を憂慮し、警鐘をならす言葉には、
熱い愛がある。欧米・西側諸国、とひとことでくくってしまうのではなく、
アメリカから流れてくる情報だけを世界基準だと鵜呑みにし、
思考を放棄するのはもうやめなければいけない。

《どんなに理解するのが難しいことでも、それを自分自身の力で学び、
わかろうとすることを決してやめてはならない》 アントニオ・グラムシ(思想家)


『シモネッタのドラゴン姥桜』 田丸 公美子 
『シモネッタの男と女』 田丸 公美子 

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どちらも、「シモネッタの」と枕詞をつけないほうがよかったのではないか。
これまでの作品とは、トーンと立ち位置が異なるエッセイ集2冊。

「姥桜」は、ひとり息子さんの成長を追った、母としての記録。
開成から東大法学部。在学中最年少で(旧)司法試験に合格、
東大を主席で卒業、というわが子の話を書くのは自慢にほかならないのだけれど、
病気や、両親の老い、仕事との両立、など、つらい局面を
笑いでさらりと切り抜けるユーモアが、嫌味になるところを救っているのは、さすが。
こんな母親に育てられた息子さんの切り返しも、異彩を放つ。

司法修習生になり、一人暮らしをはじめ、彼女が優先になって、
実家には寄り付かなくなった息子への手紙。宿屋のおかみになぞらえたこんな文面。

《拝啓、ますますご清祥のことと御慶び申し上げます。
さて、今年も夏期ハイシーズンに入り、当旅館の残室も一室となりました。
当期間中、料金5割増しのところ、御客様に限り、特別に通常通りの価格でお受けします。
ご宿泊、ご夕食など、お早目のご予約を切にお待ちいたしております。》

息子さんより。
《今週末は、入浴、休憩のみということにさせて頂きますので、悪しからず》

『男と女』のほうは、これまでシモネッタエッセイを飾ってきた日伊の登場人物ひとりひとりに
スポットを当てた構成。今回、イタリア男性が嫉妬するほどの
美女遍歴で名を馳せたミラノ在住の日本人、シモネッタエッセイの登場人物の常連でもある
ウタマロ氏に、初めて面会。
名うての色男に会えることに浮き足立っているようでいて、
男性の価値についての本質を冷静に
見極めている。
どんより冴えない色に煙る東京の空もようをさらりと描写することで、
そのときの著者の落胆を投影させているところが、またうまい。
その客観性は、盟友、米原万理さんとの別れを描いた章で、
あられもなく崩れている。シモネッタらしからぬ、悔恨。心からの叫び。
この最終章だけは、早く読み進めることができず、
いつまでも胸に残る深い余韻を残した。


『ジーノの家』 内田 洋子 

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日本エッセイスト・クラブ賞、講談社エッセイ賞を、史上初、ダブル受賞した作品。
イタリアの名も無き人々のものがたり十篇。イタリア在住三十年余という著者の目を通すと、
人情味という点では、イタリアと日本はそれほどかけ離れていないのかもしれない、と思えてくる。
この作品でも、語られないことの中にこそ、深い感情が埋め込まれている。

語るべきこと、敢えて語らないこと、の美学のようなものがあるのだと思う。
軸がブレない書き手だと感服。
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by office_bluemoon | 2013-03-28 08:58 | こんなもの、読んだ(本・雑誌)

specialty


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酒造をたずねる。
杜氏さんの書棚。
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by office_bluemoon | 2013-03-25 08:54 | 活字に遊ばれ(活字のある風景)

花曇


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by office_bluemoon | 2013-03-24 21:58 | 刹那を留める(タイトルのみ)

Jazz Week Tokyo 2013 八代亜紀 『夜のアルバム』

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ジャズと演歌のあわい、ってこんなに曖昧だったなんて。


Jazz Week Tokyo 2013の初日@ヒカリエ シアターオーブ

Fly Me to the Moonから始まる宵。
ゲスト・日野 皓正さんのつきぬけた音が入る、
スインギーな『舟歌』は秀逸だった。


(写真は、八代亜紀さん自筆の、油絵。)

Fly Me to the Moon (short clip) 

Jazz Week Tokyo 2013
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by office_bluemoon | 2013-03-23 00:01 | こころ、泡立つ(events)

『70's バイブレーション』

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『70's バイブレーション』
世相と音楽とサブ・カルチャーでひもとく、
70年代クロニクル。

大感動。
幾多もの『そもそも』に出会った。
印象に残った三点。

1)2,000枚のアルバムジャケット。
2) 壁には観光地のペナント、本箱にはブリタニカ、引き出しに
エマニエル夫人グラビアが隠してある勉強机、の
『70年代ロック青年の部屋』
3) 『帰ってきたヨッパライ』をフルコーラスで聴けたこと。
(私の世代では、これ、『はじめ人間ギャートルズ』の挿入歌)

展示にあった植草甚一さんの本、『知らない本を捜したり読んだり』、が
どうしても欲しくなって古書で取り寄せた。

NY、ハードボイルド、洋書、書店、古書・雑貨蒐集、散歩、映画、ファッション、
ロック、ジャズ、酒場。
今頃気づいた。背伸びして、背伸びして、
いまだにJ・Jさんに届こうとしているようなものなのだなぁ。




横須賀美術館。4月14日までです。 
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by office_bluemoon | 2013-03-22 01:31 | こころ、泡立つ(events)

burning, burning


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訴えるでも、寄り添うでもない。
しずかなる、熱情。
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by office_bluemoon | 2013-03-21 19:37 | 迷路に遊ぶ(おもふこと)

Hama

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名画座 Jack and Bettyで
探偵濱マイクがいた横浜を辿る。

「ぴあ」を毎号買って3本立て500円さがして
ミニスカートの制服のままこっそり通った、
高田馬場、新宿、池袋の裏通りが
フラッシュバックした若葉町界隈。

シネコンで映画を観るのにすっかり慣れて
名画座に怖気づいてしまうなんて、
つくづくヤワになったものよ。

館内随所に積まれた映画のチラシを繰るもまた愉し。
暮れなずんでいく横浜橋商店街の裏道を縫うように歩き、
「いそべ焼き250円」と書かれた喫茶店のメニューに足を止め、
店内をそうっと覗き込む。

伊勢崎町モールを冷やかし、日の出町のビニールシートの店をくぐり、
川べりを見やり、夜桜の野毛をハイボールでしめくくる。

新しいから心躍るのではなく、
懐かしい風景のかけらを拾い集めたくて、ただ追いかけて、追いかけて。


横浜みなと映画祭 
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by office_bluemoon | 2013-03-20 19:58 | こころ、泡立つ(events)

『映画字幕五十年』 清水 俊二

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嫉妬するほどしびれる、
歴史に残る名台詞はいかにして生まれたのか。
それを知りたくて、古書で入手。

チャンドラー節を期待したのだけれど、拍子抜けするくらい、
ひっかかりのない、読みやすい、健全な文体だった。

やせ我慢の美学、たるハードボイルド、
フィリップ・マーロウの台詞の数々。
これは、マーロウになりきった、
まさしく役作り、ならぬ、訳作りだったのか。

本書をものした時点の
44年間で(曰く、「まだ千五百本にもなっていない」)1,317本の映画字幕を手がけたのだという。

日本における字幕映画の黎明期、「レヴュウ」とか「スタア」が
アメリカから大挙して押し寄せてきた時代を駆け抜けた風雲児。

今よりもずっと不便で入ってくる情報も少なかったはずの昭和が
やけに輝いてみえるのはなぜだろう。
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by office_bluemoon | 2013-03-12 20:34 | こんなもの、読んだ(本・雑誌)