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「肉筆浮世絵画展」

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終了前に間に合った『肉筆浮世絵展』(17日まで)。
日本に里帰り初公開の美人をクローズアップして見られる、ということで、
平日の昼間でも大賑わい。

北斎の「京伝賛遊女図」は、顔を寄せてとっくりと拝見。
髪の一本一本、着物のしわのリアルさを競うかのような他作品の中にあり、
さらりとひと呼吸で仕上げたようなこの一枚の筆運びはあっぱれ。
展示物を最後まで見て、この画にまた戻る。

上野公園界隈・アメ横を散策してから、一路新年会へ。
『隅田川暮色』芝木好子、『月島物語』四方田犬彦、とこのところ続けて読んで
想い募っていた下町呑み。友人の水先案内で、明るいうちから
賑わう門前仲町で三軒はしご。





















***
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by office_bluemoon | 2016-01-13 08:35 | こころ、泡立つ(events)

2015年読書総括

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118冊読了。
世界文学を追う、Reading All Around the World 2015、は、8か国。

昨年と同じように、カテゴリ別ベストを。

【ノンフィクション部門】 
『ならずものの経済学』 ロレッタ・ナポリオーニ
(第4四半期に紹介した記事はこちら
コメント:イスラム国関連の気をふさがせるようなニュースが連日続いた頃に、読む。
著者はイタリア生まれの経済学者。世界の暗黒組織の趨勢を説く。
少し前の本なので情報がやや古いが、犯罪のグローバル化を
知っておくことがひいては、みずからの身を守ることになる。

【フィクション部門 短編・中編・長編】
『猫の客』 平出 隆
コメント:猫と物書きである自分と日常、を書いた作品、世に数ある中でも秀逸。
猫への愛におぼれず、むしろ淡々と理知的に日常を描いているがゆえに、
不在の穴は深く、底知れず暗い。

『ロゴスの市』 乙川 優三郎
コメント:私はこの本を一生好きでい続けるだろう。
英語翻訳者である主人公と、英語通訳者になった女主人公の
学生時代から物語は始まる。
外国語と日本語を橋渡しする、という役割は同じだが、翻訳者と通訳者とでは
それぞれが背負う業(ごう)や矜持のようなものは、大きく異なる。

つましい生活の中で、しっくりとくる言葉を探り当てていく翻訳者のよるべのなさ。
浮世離れした、隠者のような生活。翻訳者が常に抱いている、こんな生活でいいのか、という
もどかしさをよくぞ言葉にしてくれた、と唸る。
呻吟し、言葉を練りに練って絞り出し、再構成し、磨き上げていく翻訳者。
瞬時に最適の言葉をしゃべり手のスピードにあわせて遅滞なく紡いでいく通訳者。
ことばのしもべとなった二人。しかし、同じしもべでも、辿る運命は大きく分かれていく。

作家と翻訳者、そして作品と編集者との幸福な出会い。一冊の洋書が見いだされ、
日本語の訳書が誕生するまでに介在する人の綾。
いずれのエピソードも無理がないし、一冊の洋書とこういう出会いかたをしてみたいものだと
翻訳者のはしくれとして夢想する。
この本はこの先幾度も、読み返すことになるはず。

『自由生活』 ハ・ジン
(第4四半期に紹介した記事はこちら
コメント:国を捨て、異文化の中でアイデンティティの葛藤を味わいながら成長する物語が好きだ。
その中でも、中国バックグラウンドの主人公の作品は、久しぶり。上下巻、
一気に読ませるヒットだった。人種的マイノリティー、言語のハンディ、学歴があっても肉体労働に
甘んじざるを得ない、という状況の中なおも、文学、それも英語で詩を書いて身を立てようとする
主人公がただただ、まぶしい。

【エッセイ部門 海外・日本】
『別の言葉で』 ジュンパ・ラヒリ
コメント:この先おそらく一生好きでい続けられる本を嬉しいことに、昨年はもう一冊見つけた。
アメリカで、そして日本でもすでにベストセラー作家としてゆるがぬ地位を確立している
ジュンパ・ラヒリがイタリアに移住する。その地に根をおろし、第二の外国語であるイタリア語で敢えて
創作活動を始めたその第一作(したがって、原作はイタリア語)。
好き、に理由などなく、ただ惚れてしまった言語。その言語に向き合った時の憧れ、衒い、
思うに任せない焦り。こうしたおぼつかない心の揺れが、流ちょうな母国語を介さずに、
学びたての言葉で書かれている。直球で、純情なラブレターのように初々しく、
切実に読む者に響く。
やはりイタリア語の河を渡ろうとしている者にとっては、冬の北斗七星のような道しるべの書に。

『小津好み』 中野 翠
コメント:小津の初期の映画を何本かまとめて観る機会を得、この秋、小津調のものに
すっかりかぶれていた。その指南本として手に取った。女性目線でとらえた部屋のしつらえ、
女性の装い、言葉遣い、でひもとく本書は小津映画初心者にも、親しみやすい。
まだついそこにあるように思えてならない
昭和へのノスタルジアをいやがおうでも掻き立てられた。

【ノウハウ本】
『生きる技法』 安富 歩
コメント:「恐怖や不安にとらわれず、その人がその人らしくある姿は美しい。だから日本には
美しい子供がほとんどいなくなった」という趣旨のことをこの人がラジオでしゃべっているのを
小耳にはさみ、興味を持った。
≪自立とは多くの人に依存することである≫から始まる命題を端緒に展開し、
最終命題15≪成長は、願うことで実現される≫にまでもっていく水も漏らさぬロジックはみごと。
元気が出た。

【紀行本】
『若山牧水 伊豆・箱根紀行』 
酒と旅を愛した牧水の足跡をたどる本。この本を片手に、数回にわたって、
小田原から西伊豆各地を昨年何度も訪れ、牧水を想った。土地を通して人を知る旅がある。
この先もそんな旅を続けたい。

【洋書】
Lowland Jhumpa Lahiri
(第4四半期に紹介した記事はこちら
コメント:理路整然としていて、ごてごてとした飾りの一切のない文章だからこそ伝わる、
そこはかとない心のふるえ。ラヒリのそんな文章が好きだ。ハ・ジンの作品にも通底する、
アメリカ移住者ゆえの、アイデンティティの危機。ジェネレーションの断絶。生まれた場所ではない
文化圏で歳をとっていくとはどういうことか。だからこそ、の、家族の結びつき。
家族でありながら、わかろうとしてもわかり得ないとわかったときの孤絶感は、
日本に生まれぬくぬく育った者にははかり知れないはず。


【2016年の読書目標】
2015年は、サイエンス本が少なかった。読まねばリストにあるものを、
2016年にはちゃんと消化すること。
100冊クリア、そして、海外文学10カ国以上、を目指したい。



写真は年末に旅行で訪れたとある宿の図書室。
建築や日本美術、食文化や松岡正剛氏の本のコレクションが特に多く、
もうなくなってしまった
丸善・松丸本舗が思い出されて。逗留客がほかに誰も訪れないのをいいことに、
何冊も取り出して目の前に積み上げ、何時間もここにこもっていた。

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by office_bluemoon | 2016-01-09 16:39 | こんなもの、読んだ(本・雑誌)

湯こもり読書 -1

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風呂場用の読書しつらえがあった宿の
図書室の一角のならび。

数寄屋造りの建築家関連の書籍や、食エッセイ、
芹澤銈介のコレクションにセバスチャン・サルガドの写真集が並ぶ、という
偏りっぷりはかなり好み。
今年は文字ばかりではなく、視覚に訴えるイベントにもっと足を運ぼう、と
新年早々、心に誓う。

その昔、母親が愛読していた女性エッセイストの本があり、
懐かしく思いぱらぱらと。夕食の時間が来たから階下に降りると、
くだんの女性エッセイストが秘書と思しき女性とやはり食事に現れられて、
びっくり。小さく声をあげそうになったのを、呑み込む。


この宿で読んだ自前の本:
『隅田川暮色』 芝木好子
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by office_bluemoon | 2016-01-09 15:24 | 活字に遊ばれ(活字のある風景)

≪風呂で読む≫シリーズ


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ごゆるりとどうぞ、と湯治場に用意されていた≪風呂で読む≫シリーズ。
「湯水に耐える合成樹脂使用」で、ページ一枚一枚がラミネート加工されているから、
湯船の淵に本を伏せようが、うたた寝して本に湯がかかろうが、心配なし。

せっかくなので、『万葉恋歌』『西行』、そして『漱石漢詩』を読破の長湯。
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by office_bluemoon | 2016-01-04 13:09 | こんなもの、読んだ(本・雑誌)

Reading All Around the World ― 読書で旅する世界 2015 第4四半期

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英語または日本語に訳された世界文学でわたる時空旅行。
Reading All Around the World の2015年第4四半期、記録を遅まきながら。
9月~12月は仕事の繁忙期と重なって、あまり読書できず。かろうじて、5冊。


#14 Lowland  Jhumpa Lahiri (アメリカ/インド)
抑制が効きながらなお、情感匂い立つラヒリ節を存分に味わえる大河小説。
カルカッタから物語は始まる。ウダヤンは政治活動に身を投じ、インド政府当局に追われる身。
革命を夢見、ボヘミアンの理想に燃えた青春を謳歌するが、とうとう当局に居場所をつきとめられ、
家から引きずり出されて妻ガウリと両親の目の前で射殺される。ウダヤンと双子のように
仲良く育った兄、スバシュはよるべのなくなったガウリを救おうとして、ガウリを妻にする決意を固め、
自分が学者として根を下ろしつつあるアメリカに連れ出す。
ガウリは新天地でウダヤンの子ベラを生む。

登場人物の誰ひとりとして、無情なわけではない。むしろ、愛に忠実に生きたはずなのに、
何かを喪失し、声なき悲鳴をあげ続けるが、その欠落感はついぞ埋められない。それぞれの場所で
信念を貫こうとして誰かを傷つけてしまう。
異文化や異なる価値観のはざまでアイデンティティーに葛藤する者の道行きを描かせたら今、
当代髄一、と思えるのがこのジュンパ・ラヒリ。

#15 『カモメに飛ぶことを教えた猫』 ルイス・セプルベダ(チリ) 
読書会の課題図書で手にする。獄中生活も経験した社会活動家、という肩書から受ける印象を
見事に裏切る、ほのぼのとしたファンタジー。いきがかりから、カモメを育てることになる黒猫ゾルバ、
そして、ゾルバをとりまく登場人物のてんやわんやがほほえましい。とはいえ、セプルベダが
世界で愛される作家、といわしめるにはこの作品だけではパンチ不足な感が。ほかの、いくつかの
作品もまた読んでみなければ。

#16 『アメリカにいる、きみ』 C・N・アディーチェ(ナイジェリア)
アフリカ圏の作家は初めてかもしれない。日常の中にするりと織り込まれている差別、戦争、民族抗争。
残酷なむき出しの現実。母親がキッチンでスープを作っている間にクーデターが起こる。続きはあとでまた作ればよい、とちょっと家を不在にするつもりで一家は家を離れるが、そこから、流浪の避難生活が始まる、といった調子で、日常の生活がいとも簡単に崩れてしまう。語り口の明るさゆえに、リアリティの諸行無常さがずしん、とくる。

#17 『太平洋 モーム短編集II』 ウィリアム・サマセット・モーム (イギリス/南太平洋の島々)
表題作は1ページ強。それでも、陽光溢れる楽園、海の薫りを想起させる、選りすぐられたクリスプな
言葉が流麗な詩のよう。各種レビューでも書かれているのだが、翻訳が素晴らしい。特に、会話文。
日本語の古さを感じさせないのは、なぜだろう。

#18 『みんなバーに帰る』 パトリック・デウィット(アメリカ)
書店のPOP、≪泥酔文学≫という文字につられて、手に取る。確かに、呆れるほど酒に呑まれて
救いようがない主人公。ただし、この作品で括目すべきは、≪君は≫、で始まる二人称の話法と、構成。
主人公の務めるバーに現れる人物にまつわるエピソードがいくつもさしはさまれ、相関関係が、
時系列も時折シャッフルし、読んでいる方もそれこそ酩酊しそうになるがちゃんと、ひとつの結末に
向かいながらストーリーが運ばれていく。ろくでなしが主人公の小説を読んでいると
どうしても湧き上がる嫌悪感を、この見事な構成と、理知的といってもいい
クールな話法がぱしっと打ち消してくれている。むしろ、読後はあっぱれ感すら。


ここまでのルートはドイツ→オーストラリア/インド→イタリア→アフガニスタン→イタリア→中国→
アメリカ(ロシア?)。これに続けて、アメリカ(インド)→チリ→ナイジェリア→
イギリス(南太平洋の島々)→アメリカ。2015年はここまで。2016年はどこまでいけるか。
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by office_bluemoon | 2016-01-02 14:04 | こんなもの、読んだ(本・雑誌)

謹賀新年


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感謝。
日々、ひとつでも美しい何かを世界に添えられますように。
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by office_bluemoon | 2016-01-01 10:08 | こころ、泡立つ(events)