夜話
「次の満月に、浜でほら貝の音色を聞きませんか。
そのあと月の旅人になりませんか」
ともだちはある日、
握りこぶしほどの
貝を手に入れた。
海で吹けたらいいな、と
来る日も来る日もその貝を磨き、
唇をあてていた。
あいにく、その晩は曇りだった。
それでも、仲間たちは集まった。
浜に立ったともだちは、すうっと息を吸い込んで
しばらく目を閉じた。
ほら貝の音は、
夜の静かな海を長く長く震わせた。
満月ほら貝ショー。
観客はわたしたちと、寄せては返すさざなみ、
不審に思って近づいてきたおまわりさん。
そして、もしかしたら海で眠る生き物たち。
雲かげできっとお月さまも様子をうかがっていた。
湿り気を帯びた夜風が震えると、それは初夏の薫り。
響き渡るほら貝の音はきっと、
野生を呼び覚ます合図。
そうか。
もうすぐ、夏、だった。
醒めることのない真夏の夜の夢を
信じてしまいそうな、幻惑と情熱の季節。
夜を翔ぼう。
夕陽を生け捕りにいこう。
裸足になって月の裏側で鬼ごっこをしよう。
(この写真だけ presented by ☆-jiくん)
by office_bluemoon
| 2010-06-05 11:40
| こころ、泡立つ(events)