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「土と水陽」 左官  挾土 秀平

壁。
乗り越えるのではなく。
向き合うことで
自分の内面を
螺旋状に降りて行くような感覚に呑まれてしまう。
そんな圧倒的な包容力のある壁に出会った。



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土を捏ね、均(なら)し、抉(えぐ)り、うねらせ、刻む。
大地の鼓動、風の揺らぎ、光の刹那の煌めき、
森羅万象の気配を鏝(こて)を使って
二次元に封じ込めた土壁。

「左官」挟土(はさど)秀平さんが
土と水を練り、陽にあてて
壁に託するのは、静謐な小宇宙。
仄暗くなま暖かな深海の底。
空(くう)であり無限でもある
枯山水にも似た、内観の旅の
心象風景だ。



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そしてそこに添えられた短い文章、詩は
ただ奇をてらった机上の産物ではない。
山に分け入り、風に身をさらし、
水の冷たさに指先を痺れさせ、若葉に噎(む)せ、
岩を動かし懊悩する肉体から
ほとばしり、したたった玉。
五感を研ぎ澄ませ、
その土地の気配や精霊に
耳を傾けた果てに
こぼれ落ちたことばたちだ。

その作品と詩の前に立つ者は、
「アイデアの源はことば」であるとする挟土さんの
心の彷徨にゆるやかにいざなわれる。

琴線などというものがほんとうに心の中にあるとしたら、
その弦はやがて静かに、激しくかき鳴らされる。
妙なる音色は、甘やかに虚空に消えてゆく。

彷徨の彼方。
いざなわれるがままに螺旋階段を降りた闇の奥に遠く、
万物の源であり、すべてが帰するかそけき光が
仄かに揺らめく。

闇の中だからこそ、突然悟る。
萌える若緑や水面に映る茜や琥珀、
吸い込まれそうな水底の藍。
砂に混じる黄金や月から放たれる糸のような銀。
地上に溢れる色があまねく回帰するところも
きっとひとつ。

沸き立つ慶賀の光は、万物の中にあり、
自分の中にもある。
土から生まれ、
やがては朽ちて土に帰する無常。
それだけを繰り返し胸に刻むために、
行(ぎょう)のように、
その土壁たちの前にいつまでも立ち尽くしていたかった。











13日(日)まで
渋谷東急 Bunkamura 1F ギャラリー
「土と水陽」 



挟土秀平 オフィシャルサイト



遠笛 - 左官 挟土秀平のブログ
















































のたうつ者

挟土 秀平 / 毎日新聞社

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by office_bluemoon | 2010-06-11 10:28 | こころ、泡立つ(events)