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『吉行 淳之介 エッセイコレクション1 紳士』

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事情あって、
吉行淳之介をひもとかなければならなくなった。

小説はちょっと敷居が高く感じられて、
まずは随筆集を選んだ。
シリーズその1は『紳士』。
ダンディズム道。
遊び百般(ノム・ウツ・カウ)の心意気。
面白かった。

ジョギングをする小説家が主流にすらなりつつある現代。
だが、いわゆる破天荒で自堕落なくては
作家の估券にかかわる、といった
時代がたしかにあったし、それはそんなに遥か昔ではない。
たとえば流行歌で、女性を『あなた』じゃなくて、
『おまえ』と呼んでいた時代。

字面で出会う分には、痛快で洒脱なろくでなし。
せっかく乗ったグリーン車に隣り合わせてしまったら、
かなりの確率で鬱陶しいKYなおぢさん、になってしまうのかも。

紙面越しで面白がれるので、幸い。
呑みの席は手ごわ過ぎて
お呼びではないだろうけれど、
ギャンブルでの
打打発止(ちょうちょうはっし)は
ちょっと覗いてみたかったりもする。


『ひと言でいうなら、男の優しさとは、熊の掌でもあろうか。
熊は日本列島に棲息している獣の中では最も強い。
にも拘わらず、熊の巨大な掌は、非常に微細なところまで
撫でわけるデリケートな能力を持っている。
だから、男が真に優しくなるためにはまず
熊のように強くならなければいけない。といっても、
強くなろうと鍛錬しても決して強くはなれない。』
 - 本文「やさしさ」より


もてた秘訣はこのへんの矜持にあるのか。

『男と女』、『作家』、『トーク』と続くシリーズも
読んでみることに。














(2010-B13-0227)






吉行淳之介エッセイ・コレクション 1 (ちくま文庫)

吉行 淳之介 / 筑摩書房

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by office_bluemoon | 2011-02-28 07:06 | こんなもの、読んだ(本・雑誌)