office bluemoon

"The Long Goodbye"から -1

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もう、100回以上読み返していると思う。
文学史に永遠に残る、酒場の描写。

原作第4章の冒頭。私立探偵フィリップ・マーロウと
テリー・レノックスが、夕方まだ早い時間に
<ヴィクターズ>のカウンターに並んでグラスを傾けている。
これは、テリーの台詞。

“I like bars just after they open for the evening. When the air inside is still
cool and clean and everything is shiny and the barkeep is giving himself
that last look in the mirror to see if his tie is straight and his hair is smooth.
I like the neat bottles on the bar back and the lovely shining glasses and the
anticipation. I like to watch the man mix the first one of the evening and
put it down on a crisp mat and put the little folded napkin beside it.
I like to taste it slowly. The first quiet drink of the evening in a quiet bar ― 
that’s wonderful.”
"The Long Goodbye" - Raymond Chandler



清水俊二訳:
「ぼくは店をあけたばかりのバーが好きなんだ。店の中の空気がまだきれいで、
冷たくて、何もかもぴかぴか<「ぴかぴか」に傍点>に光っていて、
バーテンが鏡に向かって、ネクタイがまがっていないか、髪が乱れていないかを確かめている。
酒のびん<「びん」に傍点>がきれいにならび、グラスが美しく光って、客を待っている
バーテンがその晩の最初の一杯をふって、きれいなマットの上におき、折りたたんだ小さな
ナプキンをそえる。それをゆっくり味わう。
静かなバーでの最初の静かな一杯―こんなすばらしいものはないぜ」

村上春樹訳:
「夕方、開店したばかりのバーが好きだ。店の中の空気もまだ涼しくきれいで、
すべてが輝いている。バーテンダーは鏡の前に立ち、最後の身づくろいをしている。
ネクタイが曲がっていないか、髪に乱れがないか。バーの背に並んでいる清潔な酒瓶や、
まぶしく光るグラスや、そこにある心づもりのようなものが僕は好きだ。バーテンダーがその日の
最初のカクテルを作り、まっさらなコースターに載せる。隣に小さく折り畳んだ
ナプキンを添える。その一杯をゆっくり味わうのが好きだ。しんとしたバーで味わう
最初の静かなカクテル―何ものにも代えがたい」


office_bluemoon試訳2011年版:
「僕は夕方に店を開けたばかりのバーが好きだ。空気はまだひんやりと澄み、
どこもかしこもぴかぴかで、バーテンダーは鏡に姿を映してネクタイは曲がっていないか、
髪は乱れていないか最後にもう一回チェックしている。カウンターの背後に
整然と並んだボトルと素敵に光るグラス、そして予感めいた気配が好きだ。
その夜最初のカクテルをバーテンダーが作ってぴんとしたコースターの上に置き、
小さくたたまれたナプキンをその脇に添えるのを見ているのが好きだ。その一杯をゆっくりと
味わうのがいい。その夜最初の静かなカクテルを、静かなバーで飲む。最高だね」
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by office_bluemoon | 2011-06-14 19:06 | 翻訳シャドーボクシング(試訳)