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Book Club (日本文学) “The Samurai” by Shusaku Endo

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日本文学を洋書で紐解くブッククラブ、今年最後は、遠藤周作の『侍』。

徳川幕府の時代、藩主の手紙を持って慶長遣欧使節としてメキシコ・スペイン・ローマに渡った
スペイン人宣教師ルイス、伊達藩の侍支倉常長の一生をベースに書かれた歴史フィクション。
外交政策から一転、鎖国に転換した祖国、キリスト教世界の権威のはざまで揺れ動く、宗教観、
人間観を浮き彫りにする、遠藤文学の真骨頂が発揮された作品。

ディスカッションのハイライト:
-Scottの推薦。津波以前に仙台で、使節団の船のレプリカを見て、この史実に興味を持っていた、
とのこと。
-英訳もクオリティ高し、とPaulとScott。Van C. Gessel氏はDonald Keene氏と親交のある
日本文学研究者。
-ほぼ全員が、この作品を高く評価。導入部の純文学調が少々鼻についたものの、
ナレーターが切り替わるスピーディーなテンポに引き込まれた。
-史実を知っているScottや日本人メンバーたち、史実を知らないから結末も知らなかった
Paulも、一様にストーリー展開を楽しんだ。
-途中でトリックスター的に登場するメキシコに在留していた元キリシタンの日本人が
筆者遠藤の分身ではないか。
-みずからクリスチャンでありながら、「唯一神」よりも「汎神論」に移行した遠藤の苦悩が
小説に投影された作品。汎神論と仏教と神道に関する質問が寄せられたが、
仏教と神道の違いの深いところになるとうまく説明しきれない。
外国人からよく訪ねられる事柄だけに、要復習。
-日本人の持つあらゆる側面、辛抱強さ、恥の文化、外国好き、半面排他的で閉鎖的、利に聡い、
盲目的服従、などが、登場人物の性格でそれぞれデフォルメされて描かれている。
-貿易利権のためにキリスト教に転じるところなどは、現代日本の経済活動そのまま、かもしれない。
-悲惨な状況をことさらにドラマチックに書かず、抑制の効いたトーンで通した筆の達者さはさすが。
-映画化にも耐えられる構成。宣教師役には、メル・ギブソン、ゲイリー・オールドマンなど?

振り返ってみると、このクラブでは今年、私は五冊読めた(会発足の一冊目は未読。
ちょうど一年前、
オブザーバーとして参加。
"An Artist of Floating World" by Kazuo Ishiguro)。

日本人のほうが多いこちらのクラブでは英語で論理的に意見を述べる
練習をするよい機会になっている。
地元のブッククラブでは
English native のペースで話が進んでいるから、
なかなか発言に追いつけないのだけれど。
英語力プラス、何かを主張する強さ、スキルの問題。

来年からは、次回の課題本を毎回各自三冊提案することに。
次回は、”Naomi” by Jun’ichiro Tanizaki (『痴人の愛』谷崎 潤一郎)。
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by office_bluemoon | 2012-11-13 11:30 | Book club 議事録