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2014年読書総括

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ひさかたぶりに100冊を突破。仕事で読む本も含めることにした。
というのも、興味で読んでいるのか、余儀なく読んでいるのか、
境があいまいになってきたから。
『今年の●冊』、と絞るのが難しいので、無理やりカテゴリ別ベストを作った。
わがままコメントつき。

【ノンフィクション部門】 
『おそめ-伝説の銀座マダム』 石井妙子
コメント: ビジネスマンの営業指南書として勧められた。読んでみるとそれ以上に、
昭和のエンターテイメント・風俗史、女性立志伝として魅力の一冊。

【フィクション部門 短編】
『美食倶楽部』 谷崎潤一郎

コメント: 名文=読みやすい文とは限らない。読みやすくは決してないのだけれど、風格とエロチシズムが
同居する絢爛たる文体。すべてを説明しないことで読む者を惹きつける、﨟(ろう)長けた日本語。

【フィクション部門 長編】
『窓から逃げた100歳老人』 ヨナス・ヨナソン著 柳瀬尚紀訳

コメント: タニザキとは対照的に、ノリノリのグルーブ感ある日本語は、訳者の柳瀬氏の本領。
プラス、北欧版フォレスト・ガンプともいえる飄々としたスーパー老人の破天荒さといったら。

【エッセイ部門】
『シモネッタのどこまでいっても男と女』 田丸久美子

私淑するイタリア語通訳の第一人者の最新エッセイ。『苦楽を共にした』配偶者を初めて語る。
大いに笑わせながら、露悪的な楽屋オチにならないのは、世に残したい、伝えたい想いが根底にあるから。

【ノウハウ部門】
『禅の言葉に学ぶ ていねいな暮らしは美しい人生』 枡野 俊明

にっちもさっちも行かないように思えたときに出会った本。『いま、ここ』に集中することと、
手で文字を書くことで平常心を得ようとした。持ち歩いたし、毎朝頁を開いたところを読んだ。

【紀行部門】
『文豪が愛し、名作が生まれた温泉宿』 福田 国士

今年の隠れ三題は「温泉」・「旅」・「文人きどり」。日本には一生かけても回りきれないほどの名湯、
宿があり、文士たちは温泉でもの想い、人情に触れ、その経験が作品を醸成した。あやかりたくて。

【仕事関連 学術書部門 サイエンス】
『宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論』 青木薫

子どもの頃、合わせ鏡の奥に無限と宇宙を夢想した、今自分はここにいるけれど、もしかしたら
ここと違う別の世界があるのかもしれない、という幼い頃の直感をロジカルにひもとけるとは!

サイエンスだけもう一冊。
『パーフェクト・セオリー 一般相対性理論に挑む天才たちの100年』 ペドロ・G・フェレイラ著 高橋則明著
学生時代何が苦手、って、物理ほどいくら読んでも解せない科目はなかった。それが、今になって
一般相対性理論をめぐる科学者たちの意地、相克が楽しく、物理学が面白く思えた記念碑的一冊として。

【仕事関連 学術書部門 人文】
『齊藤孝のざっくり!西洋思想』 斎藤孝

翻訳をしていて、西洋思想の根っこにある神と人間、心と精神の相関がわからなければ、
ことばの表面を撫でているだけなのでは、というジレンマが少し解決した。


【2014年の読書傾向まとめ】
1) 黒柳徹子さんはあの長寿クイズ番組で事前に出題テーマを教えてもらうと、
出演までの一週間に必ず3冊本を読むことを続けているのだという。以来、新しい分野の
翻訳を始める前に最低1冊、時間があれば3冊以上その分野に関する書籍を読むことにしている。
2014年は何と言っても、宇宙本がメイン。半年の間に30冊余関連書を読んだ。
最初はもともとの興味の埒外のことであっても、仕事で必要となると抵抗なく読む。
そうすることで、読書の幅が格段に広がった。

2) 宇宙本の次に多かったのが、心理学・哲学。今年の異色は、温泉と文士関連本。

3) 2) の流れで、小旅行、遠出をするときにその土地にちなんだ作品を前もって読む
愉しみを知った。この選に洩れたけれど、司馬遼太郎の『街道』シリーズ + 旅、は、
秋に訪れた大内宿で味をしめた。

4) そのきっかけとなったのが、今年新たに参加させていただいた読書会(日本語)。
それぞれ仕事を持つメンバーが読書合宿@湯河原を企画し、しかも出かける前に
湯河原が舞台になった漱石の『明暗』を読了する、というしばりをしっかり守っている
パッションに触発された。ほかにも、子どもの頃に読んで数十年それっきりの本、
自分だったら手を伸ばさない本を、読書会をきっかけに読み、読後感想を述べる経験は、
今年の読書を豊かにしてくれた素晴らしい出会いだった。

独りで本を読んでいるだけでは、こういう広がりはなかった。ときにはリアルな世界での出会いに
ぽん、と飛び込んでみることも大事。

だから2015年のテーマは、こうなった。
「本を読みながらもフットワーク軽く、感性を豊かに」。
by office_bluemoon | 2015-01-03 17:57 | こんなもの、読んだ(本・雑誌)