my old friend
夕食を済ませてからふと思い立って、
田んぼを見渡せる丘陵地に向かって車を走らせた。
ヘッドライトを消すと、闇。
怖しい闇ではなく、懐かしい気持ちになる暗闇だった。
少し下げた窓から聞こえてきたのは
競うように、それでもこちらをうかがうように鳴くカエルの声。
カーラジオを消そうと思ったら、トム・ウェイツが聞こえてきた。
人の気配を感じてひかえめに鳴く、カエルのコーラス。
その上に、搾り出すようなトム・ウェイツのヴォーカルとピアノが
ずん、ずん、と重なり闇に沁みていった。
どこで咲いているのだろう。甘い花の香りがした。
by office_bluemoon
| 2015-05-28 15:50
| ほんの習作(掌編・エッセイ他)