
ゴッホとゴーギャンが一つ屋根の下に暮らした
南仏での2ヶ月に光を当てた「ゴッホとゴーギャン展」。
夢の共同生活は、ゴッホの自傷事件で幕を閉じる。
2人が愛用した椅子と所持品をモチーフにした
ゴッホの静物画『ゴーギャンの椅子』、そして『ゴッホの椅子』には
そこに座るべき人物が描かれていない。
ゴッホの死から11年後。タヒチに暮らすゴーギャンはフランスから
向日葵の種子を取り寄せ、向日葵の花束とひじ掛け椅子を描いて
ゴッホへのオマージュとした、といわれる。
そこにいたはずの者を敢えて描かなかった、相手への想い。
観賞後、マフラーに顔を埋めて歩いた銀杏舞う広場は
さながら、パリだった。
***

思いがけず仕事が早く終わり、そこから吹雪の中、
長靴で走って走ってミニシアターの最終回に滑り込んだ。
あとから考えると、このときにさんざん迷ったけれど、
間に合うギリギリでも行くことに決めた自分を褒めてあげたい。
日本酒になぜ、私はこんなにも惹かれるのだろう?
この疑問に光を当ててくれたのは
『南部美人』の五代目蔵元、『玉川』のイギリス人杜氏、
アメリカ人の the Sake Guyこと、<日本酒伝道師>の3人。
ほぼ貸し切りの最終回に、ひとりで観たのも正解。
311のくだりでは、鼻水と共に滂沱の涙。
この映画をきっかけに、はじかれたように、新しい出会いとご縁が始まった。
***

東京の奥座敷。
渓流を臨む酒造。
10年の眠りから醒めた日本酒の古酒に。
ゆっくりと育まれたお酒は、
こっくりと琥珀色。もはや果実に近い蜜の薫り。